2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
木村 洋 熊本県立大学, 文学部, 講師 (70613173)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 内村鑑三 / 「流竄録」 |
Research Abstract |
本年度に明治中期(1890年代)の内村鑑三の言論活動を調査した。内村の著作や記事、特に『基督信徒の慰』(1893)、「流竄録」(1894)、『地理学考』(同)、『Japan and the Japanese』(同)、『How I Became a Christian』(1895)を検討した。また内村の活動の舞台となったメディア、特に『国民之友』『万朝報』『東京独立雑誌』『聖書之研究』を調査した。さらに、内村の著作の受容を把握するため、『新声』『文庫』等の青年投稿雑誌や論評雑誌を調査した。 これらの調査によって内村の表現活動が明治中期の文学や思想の展開において無視できない試みだったこと、さらに、新世代の文学の担い手たちに大きな刺激をもたらしたことを確認した。他のキリスト教知識人とは異なる内村の視野の独自性もこの調査から見えてきた。 以上の検討は、明治中期における「写実」理念の展開を把握する上で重要な意義を持っている。例えば内村は、アメリカ流浪時代の自伝的記録、「流竄録」について、「余は唯だ余の見し事、聞きし事の有の儘を語り得るのみ、『流竄録』亦た此類なり」(「改版に附する自序」『警世雑著』1900)と述べている。ここに見られる、「見し事、聞きし事の有の儘」を記述していこうとする意識を考慮するとき、内村の試みは、伝統的表現に異を唱えた同時期の小説家たちと協調的な実践として浮かび上がるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実施計画」で予定していた作業をおおむね進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究成果を近いうちに論文にまとめ、発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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