2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24720102
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
木村 洋 熊本県立大学, 文学部, 准教授 (70613173)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | キリスト教 / 政治小説 / 植村正久 / 国木田独歩 |
Outline of Annual Research Achievements |
明治中期のキリスト教文化圏の動向を調査した。具体的には、植村正久、小崎弘道、徳富蘇峰などのキリスト教知識人たちの著作、『六合雑誌』『東京毎週新報』『基督教新聞』『女学雑誌』『国民之友』『日本評論』『評論』『文学界』などの代表的なキリスト教メディアや『近代日本キリスト教新聞集成』(マイクロフィルム)などの資料を対象とした。 この調査を通じて明治中期のキリスト教文化圏の動向が、二葉亭四迷『浮雲』(1887-1889年)をはじめとする同時代の「写実」的な表現の動向とどのように関連していたかを検討した。そこで見えてきたのは、政治小説に体現される英雄中心主義への懐疑、平凡な生活者たちの経験への関心において両者の間に共通性が見られるということである。言い換えれば、キリスト教文化圏の動向は、自由民権運動期の価値観や表現を相対化する視野を提供するための思想的基盤となっていたと考えられる。 さらにこの動向が、1900年代の国木田独歩の文業や藤村操の自殺などの展開を予告するものだったことを指摘した。例えば植村正久の『真理一斑』(警醒社、1884年10月)では「我」への懐疑が熱を帯びた筆致で綴られている。こうした人生への思索的態度は、のちの独歩の深刻な小説群などに見られるものであり、ここに明治中期のキリスト教知識人たちの活動の先駆性を確認できる。 この成果を、「人生を思索する精神」(拙著『文学熱の時代』名古屋大学出版会、2015年11月)という論文にまとめた。
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Research Products
(2 results)