2012 Fiscal Year Research-status Report
近世初期観世流謡本刊本変遷過程をめぐる研究ー玉屋本の書誌的研究を中心にー
Project/Area Number |
24720107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
伊海 孝充 法政大学, 文学部, 准教授 (30409354)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 能楽 / 謡本 / 古活字版 / 書誌学 |
Research Abstract |
2012年度は、本研究の最も基本資料である天理図書館蔵古活字玉屋本の資料収集ならびに分析を中心に、研究を進めた。天理図書館で原本調査を行ない、本資料の独特の活字、欠損部分など個体的特徴を把握した(原本でしか得ることができない書誌的な特徴について、丁寧に調査をおこなった)。また、本資料は、全冊全丁の撮影と紙焼き写真の複写依頼を行ない、いつでも原本の特徴が確認できるよう、研究環境を整えた。 撮影にした資料は、当初の計画とおり翻刻をしながら、資料分析を行なっているが、翻刻した曲は10曲程度にとどまっている。ただし、分析作業に中で本資料の書誌的特徴を記録し、次年度以降の調査・分析のための基礎データの蓄積をあわせて行なっている。 同時に法政大学蔵整版本玉屋本の資料分析も行なった。まず、資料の撮影を行ない、その上で整版本間の相違点を把握した。また、本資料の由来である「玉屋」は、この整版本群の印として見られるものである。この「玉屋」についての調査も、本研究では必須であるため、江戸初期の京都書肆と出版状況についてもあわせて、研究を行なった。 また、現在報告されていない玉屋本の現存状況を把握するため、愛知県で資料調査を行なった。当初の予定では、東北地方に赴く予定であったが、名古屋市鶴舞図書館に関連資料がある情報を得て、調査地域を変更した。結果、玉屋本の存在は確認できなかったが、他所が所蔵する古活字版謡本の情報などを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2012年度は、本務校の校務が想像以上に多忙であったため、研究は若干進展が遅れている。遅れている点は、以下の2つである。 一つは、古活字玉屋本の翻刻である。当初50曲も目標としていたが、まだ10曲程度しか完了していない。遅延分は、残りの2年度で可能な限り翻刻していく予定である。 もう一つは、論文の発表である。当初整版本玉屋本の特徴を、論文としてまとめる予定であったが、2012年度中にまとめることはできなかった。論文を執筆するための分析は終わっているので、2013年度には公にする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は2012年度に達成できなかった、整版玉屋本の特徴および、古活字玉屋本との比較を論文化することを第一の目標とする。そのために、学会等での口頭発表を1回以上、行なう予定である。 さらに、2013年度の研究課題であった同時代の古活字本の調査を開始する。とくに、活字の調査を集中的に行ない、古活字玉屋本の出版状況把握につとめる。 また、玉屋本現存調査は、昨年度行なうことができなかった東北地方諸機関に赴く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度は、研究費(直接経費)総額60万のうち、50%は調査旅費、30%は資料費、残り20%は雑費に充てる予定である。
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