2013 Fiscal Year Research-status Report
日本中世後期軍記をめぐる文化論的研究――東国文化圏及び大内氏文化圏等を中心に――
Project/Area Number |
24720112
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Research Institution | Baiko Gakuin University |
Principal Investigator |
田口 寛 梅光学院大学, 文学部, 講師 (50625853)
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Keywords | 日本文学 / 軍記 / 後期軍記 / 日本中世後期軍記 / 東国文化圏 / 室町軍記 / 鎌倉大草紙 / 本文批判 |
Research Abstract |
平成25年度に提出した研究実施状況報告書(平成24年度)においても述べたことではあるが、研究課題に掲げる「日本中世後期軍記」の研究を推し進めるにあたっては、本文を分析していくために最も基本的であり、かつ重要な領域である諸伝本研究・本文批判研究を地道に長期継続していくことが、避けては通れない。諸伝本の展開様相について究明することは、それ自体が「書物」を中心とした文化研究であり、本文批判もまた、作品の内容を歴史資料として扱ったり解釈・評価の対象としたりする上での根幹となる作業である。 研究代表者は、上記の問題意識に基づいて、本科学研究費の助成を受ける以前から、日本中世後期軍記作品の一つに位置付けられている『鎌倉大草紙』のうち、研究代表者の所蔵となっている新出写本を翻刻及び紹介する研究を行ってきた。この新出伝本は、研究代表者が積み重ねてきた当該作品の伝本調査研究・本文分類研究において、最も原態に近いと見なされる系統に属すものであり、また、少なからぬ欠点を有しながらも現在において通行本文として広く流布している『群書類従』所収本を相対化することが期待されるものである。 平成25年度は、研究代表者が所蔵する写本について、翻刻紹介の完結を目指し、無事に発表公開を遂げた。またそれと同時に、翻刻した範囲の本文について、諸伝本との比較による特徴を述べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度に提出した研究実施状況報告書(平成24年度)において述べた、研究代表者所蔵写本の翻刻紹介を完結させるという目標が達成されたはしたものの、本来提示していた研究課題の全容から見れば、平成25年度の達成度は、予定していたものと比較して、遅れていることを認めざるを得ない。 その理由として、平成25年度は、従来より継続している武辺咄集『常山紀談』の二者共同による訳注作業や、所属研究機関における校務といった、本課題研究以外の諸活動に大きく時間を割くことになってしまったことが挙げられる。また、平成25年度には、前倒し支払請求を行ったことによって、研究課題に深く関わる作品である『結城戦場絵詞』の貴重な新出模写本を入手することができ、そのことによって新出模写本の散逸も防ぐことができたが、新出模写本の発見、前倒し支払請求の手続き、新出模写本の入手といった過程が全て、年度の後半期であったこともあり、新出模写本の調査研究を引き続き次年度に繰り越すことになってしまったことも、理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」欄に記した『結城戦場絵詞』の新出模写本に対し、精査のスポットを当てることが、平成25年度に引き続く、直近の課題である。また平成25年度末には、新出模写本の精査結果を記録するために、一眼レフデジタルカメラ(Nikon D3300 ダブルズームキット)の購入を、当該年度予算の残額の中から行った。新出模写本に限らず、これまで翻刻紹介してきた研究代表者所蔵の新出写本『鎌倉大草紙』や、調査旅行によって発見した資料などを、これによって記録撮影し、その撮影画像を発表公開する場を確保することも、必要事項となろう。 なお、本研究そのものではないが、武辺咄集『常山紀談』の二者共同による訳注作業も、継続して依頼されており、それ以外に、外部の研究者から依頼を受けている室町軍記の事典項目執筆についても、活動が本格化し始めている。これらは、本研究の推進を側面から支える重要な活動であるが、本研究それ自体とどのように均衡的な比重を保つかが、小さくはない問題である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、前年度と概ね同様に、日本文学関係図書・日本中世史学関係研究図書及び、新出模写本や、一眼レフデジタルカメラの入手等に研究費の多くを費やした。 取りわけ、高額に及ぶシリーズ形式の図書(古典文学全集)の購入のため、前年度の残額を平成25年度に繰り越し、当初の平成25年度の交付(予定)額に加えて、実際の平成25年度の交付(予定)額を増やすこととした。その結果、シリーズ形式の図書の購入を、使用計画どおりに行うことができた。また、新出模写本の購入については、平成25年度の残額では賄いきれなかったため、200,000円の前倒し支払請求を行って、購入に成功した。その後、前倒し支払請求を行った上での平成25年度残額で、一眼レフデジタルカメラを購入したが、残額39,918円については、平成26年度に繰り越すこととした。 平成25年度の残額については、当初の平成26年度の交付(予定)額に加えて、実際の平成26年度の交付(予定)額を増やすこととした。 平成26年度は、本研究の最終年度であるので、研究課題のとりまとめが必要である。これまでどおり日本文学関係図書(日本中世文学関係研究図書など)・日本史学関係図書(日本中世史学関係研究図書など)を購入するとともに、関係する原資料・複写資料の収集・調査等や、電子機器など、研究課題のとりまとめに必要な消耗品の購入に、研究費を使用することを、計画の中心としている。
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