2013 Fiscal Year Research-status Report
第一次世界大戦勃発100周年のために:現代イギリスにおける大戦の記憶の行方
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24720121
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
霜鳥 慶邦 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (10400582)
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Keywords | 第一次世界大戦 / 記憶 / イギリス文学 / 歴史 |
Research Abstract |
まず、2009年に「第一次世界大戦世代」が不在となり、新たな時代へと移行した現代イギリスにおける大戦の記憶の行方について考察し論文にまとめた。結論として、桂冠詩人Carol Ann Duffyの詩'Last Post'が孕むアンビヴァレンスと亀裂が、現代イギリスにおける大戦の記憶の核心的特徴を体現している様子を明らかにした。論文は『英文学研究』第90巻に掲載された。この論文は、これまでの大戦の記憶研究の成果をふまえつつ、「第一次世界大戦世代」不在の新たな時代へと移行した現代イギリスの文学・文化・政治を考察射程に含めることで、先行研究を大幅にアップデートした点で、意義ある論考と考えている。 当初8-9月に予定していた現地調査を都合により実行できなかったが、3月に実施することで、ある程度の内容をカバーすることができた。イギリスとベルギーを中心に調査を行ったが、特に、大戦100周年に向けて大規模にリニューアルしたイン・フランダース・フィールド博物館(ベルギー、イーペル)では、大戦の記憶の現代的意味を考察するための貴重な情報を得ることができた。 また、主にインターネットを活用して、第一次世界大戦100周年へと向かう各国の文化的動向を常にチェックし、最新の情報を収集 ・整理・分析すると同時に、第一次世界大戦勃発100周年に当たる次年度に向けて、複数のシンポジウム企画の基盤構築作業に取り組んだ。 全体として、これまでの研究成果を論文にまとめて発表し、現地調査によって重要な情報を獲得し、次年度の研究へのスムーズな継続・発展 のための情報基盤・作業基盤の構築も着実に進めることができ、意義ある研究成果であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は10月の職場異動のため、夏の一定期間を利用しての現地調査を実行することができず、研究計画を若干修正せざるを得ない状態が生じたが、3月に短期間ではあるが現地調査を実行することで、ある程度カバーできた。また、研究成果をまとめた論文が学術誌に掲載され、さらに次年度の企画の基礎固めも進めることができたため、研究は全体的におおむね順調に進展したと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年は第一次世界大戦勃発100周年にあたり、国内外で様々なイベントが企画されている。その世界の動向を、現地調査を含めてリアルタイムで追い考察することが大きな目的の1つとなる。また、現時点で、第一次世界大戦をテーマにしたシンポジウムの講師担当が2つ、企画担当が1つ、確定している。このようなイベントを活用して、最新の研究成果を発信していくことが、最大の目的となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度は10月の職場異動のため、当初夏に予定していた一定期間の現地調査を実行できず、3月に短期間の現地調査を実施することで、研究の内容をある程度カバーした。現地調査の期間が短縮されたことが、次年度使用額が生じた大きな理由である。 次年度使用額は、2014年度分と合わせて、現地調査費用および文献資料購入費用として活用する予定である。
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