2013 Fiscal Year Annual Research Report
オブジェクティヴィストにおける家族と言語の問題とイディッシュ語の影響
Project/Area Number |
24720122
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
宮本 文 群馬大学, 教育学部, 准教授 (90507930)
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Keywords | アメリカ文学 / イディッシュ文学 / アメリカ詩 / ユダヤ系アメリカ人 |
Research Abstract |
本研究の目的は従来のユダヤ系文学にとって重視されてきた父子関係に加えて、母子関係に注目することによって、ユダヤ系移民2世が主要メンバーである詩人グループ、オブジェクティヴィストたちが置かれた重層的他言語空間(英語、イディッシュ語、ヘブライ語)に踏入り、彼らの詩作がいかにジェンダーと言語のアクロバティックな交錯のなかで豊かに醸成されていったのか明らかにするものである。発表という形で成果を外に出さなかったものの、資料収集や学会や勉強会での意見交換を活発に行うことができた。その結果、父子関係の系譜やモチーフを重視するユダヤ系文学でも小説と詩では成り立ちもその後の発展も違うものであること、また女性と同等視されるドメスティックな領域で話されていたイディッシュ語の文学はバラッドなどの周縁的な声を拾う形式などを通し伝達されてきたこと、これら二つは本研究に先立つ研究でも派生的に浮かんできた問題系であるが、今回更に発展した形でとらえ直した。具体的に言えば、聖なる/男性の言語とされてきたヘブライ語と俗なる/女性の言語とされてきたイディッシュ語の二項対立に、英語という補助線をひいたとき、その二項対立が様々な形で揺らいでいく。移民のアメリカへの同化を英語という言語へ組み込まれることだとすると、英語は父にとっては聖なる言語の特権性を奪い、また英語が不得手という点において家父長的なポジションを危うくするもの、ひいては先に挙げた二項対立を揺るがすものになる。また母子関係においては優しいイディッシュ・マメから口うるさいジューイッシュ・ママへの移行となって顕われる。そのような中、新世界ではヘブライ語を学ばず、幼少期にはイディッシュ語環境で育ち、公教育で英語および英文学を学んだユダヤ系2世の詩人たちの詩作は自ずと実験的なモダニズムとなる。現在は資料整理を終え、成果を発表すべき論文執筆中である。
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