2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24720130
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
山内 政樹 千葉工業大学, 社会システム科学部, 准教授 (70609502)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イギリス文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
都市部における登場人物の描写について研究を行った。都市部では、視点となる人物が歩いて回るツアーガイドのような役割を担っている。この人物の視点を通して物語が展開し、読者は彼と同じ視点、速度で街並みを観光し、景観を楽しむ。これは交通機関の発達に伴い、大小さまざまなツアーがイギリスで展開されたことと大きく関係している。これまで上流階級に限られていた旅行が、ツアーの低料金化や労働者の収入増加により多くの人が旅行を楽しむことができる時代となった。その旅行感覚を読者に提供する有効な方法が、作品中の歩行者の視点を通して小説を展開することである。それ故、その人物の歩行表象そのものより、彼の見るもの、関係するものを描写するようになった。 続いて、20世紀前半の小説の場合、「意識の流れ」が小説手法に大きく取り上げられ、物理的・身体的機能よりは、人間の意識の流れが描かれる。また、電話などの通信機器の発達に伴い、人物の移動そのものを極端に抑える小説が登場し、人物の歩行描写は明らかに19世紀の小説よりもその重要性が低下した。ただ、20世紀は多くの戦争が勃発した時代であり、軍隊で身体統制をするため、歩行訓練などを通して、その機能を制限する描写は多く描かれていることも分かった。 軍隊統制などで身体の機能を縛るという考え方は明治の日本にも取り入れられ、西洋式軍隊の隊列により、武士の戦い方とは大きく様相が異なる。それは『ラスト・サムライ』の最終決戦の描写に顕著に描かれている。近代的な武器を持った兵士が隊列を組んで進んでいく明治政府軍と、ばらばらに動く武士との対比は好例である。最近では個人を極力抑えこみ、集団としての美しさ、機能性を重視した日体大の集団行動が注目されている。20世紀以前は個人個人の歩き方にさえ違いや特徴があったが、20世紀になると個人というより、集団・社会の一員としての人間に注目が集まる。
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Research Products
(2 results)