2012 Fiscal Year Research-status Report
シャーロット・ブロンテの一人称小説の形成と発展―18C書簡体小説との関連において
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24720140
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
馬渕 恵里 関西外国語大学, 外国語学部, 講師 (00612912)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シャーロット・ブロンテ / 初期作品 / 語り / 一人称小説 / 書簡体小説 |
Research Abstract |
24年度の研究実施計画のうち、出版されている初期作品を読み進めることと、未出版の初期作品原稿を収集することについては、概ね達成できた。具体的には、今年度はまず、Christine AlexanderのThe Early Writings of Charlotte Bronteや岩上はる子氏の『ブロンテ初期作品の世界』を参考にしながら、AlexanderやWiseの編纂した初期作品集に収録されているシャーロット・ブロンテの初期作品群の中から、語りの技法や形式という点で特に注目に値すると思われる作品を優先的に読み進めていき(“The Poetaster,”“The Foundling,”“The Secret,”“The Green Dwarf,”“A Leaf from an Unopened Volume,”“A Peep into a Picture Book,”“The Spell,”“Mina Laury”等)、その後2月に、未出版初期作品の原稿を閲覧するため、Bronte Parsonage Museum、リーズ大学図書館、大英図書館を訪れ、資料収集を行った。なお、この時、Bronte Parsonage Museumにおいて、思いがけず、刊行された4つの小説の破棄された断片(特に小説の書き出し部分)が保管されていることを知り、それらの草稿もあわせて閲覧することができたのは、25、26年度で、シャーロット・ブロンテ文学全体における一人称小説の形成と発展を考察する際に役立つと思われる大きな収穫であった。またこの調査出張では、ブランウェル・ブロンテの直筆草稿や未刊行初期作品を確認し必要な情報を収集することもできた。この成果についても、次年度以降に論文として発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初期作品を読み進めるところまでは達成できたが、その特質や変遷について深く体系的に考察する段階には至らなかったため、実施計画よりやや遅れていると判断した。遅れの主要因は、交付内定以前より計画・決定されていた、ブランウェル・ブロンテに関する研究発表、ジョージ・エリオットに関する論文の執筆、さらには業績に挙げたVilletteに関する論文の執筆の準備に、申請当初予想していた以上に時間を要したためである。(ただし、結果的には本研究計画に遅れを生じさせることとなったが、Villetteに関する論文は、シャーロット・ブロンテ最後の小説における語りを分析したものであり最終的には本研究課題に直結するものであるし、ブランウェル・ブロンテに関する研究発表の準備として、彼の生涯や彼の詩作の特徴を精査したことは、本研究課題が対象とするシャーロットの初期作品―競い合い協力しあいながら執筆していた弟ブランウェルの初期作品との間に強い相関関係が見られる―を理解する一助となったため、本研究に決して無関係ではなかったことを付記しておきたい。) また、校務との兼ね合いで、24年度の渡英で現地に滞在できた期間は実質10日程であったが、出発前に閲覧を計画していたすべての未刊原稿に目を通すことは不可能であった。(初期作品原稿の所蔵先を先行研究で調べても、記載されている情報は完全ではなく、また、最も多くの資料を保有するBronte Parsonage Museumには、オンラインデータベース上には収録されていないが所蔵されている資料も存在しており、実際に現地入りするまでは、どのような資料がどこにどれほどあるのかを把握しきれないことも判明した。)こうした状況が、限られた期間内での資料収集をより困難にしている。今回の訪問先に関しては多少は要領が掴めたので、次年度からはより効率的な資料の閲覧・収集を目指したい。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度には、初期作品における語りの技法・形式の特質、変容に関する考察をさらに進めたい。具体的には、読み残している初期作品を読み進めながら既読初期作品を振り返りつつ、特に注目すべき作品を絞り込んで詳細なテクスト分析を行い、初期作品における一人称小説の形成と発展を意識しながらまとめたものを、『石田久教授喜寿記念論文集(仮題)』(論文、25年12月刊行予定)と日本英文学会関西支部大会(口頭発表、25年12月開催)において発表する計画である。また、初期作品の分析に加えて、The Professorや、24年度の調査で収集した刊行された4つの小説の草稿に関する考察を行い、この研究成果を、26年度中に口頭発表として発表できるよう、準備を進めたいと考えている。 これらの研究を遂行するにあたり、国内の関連学会に参加するほか、25年度中に1度(できれば2度)、Bronte Parsonage Museumに赴き、前回の調査では閲覧しきれなかった原稿を調査し、さらなる資料収集を行う予定である。(ただし、ある特定の原稿の閲覧が必要になった場合は、それに応じて渡航先が変更・追加されることが起こりうる。) 翌26年度には、シャーロット・ブロンテの一人称小説の形成と発展の全体像を、18世紀書簡体小説の語りの技法や形式との関連において考察したい。そのために必要となる18世紀書簡体小説に関する資料の購入や取り寄せを、25年度より徐々に開始する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
スキャンの性能を重視するために、申請当初に予定していた複合型プリンターではなくスキャナーを購入したことと、初期作品に関する資料の中には、複写・購入できなかったものや現在未購入のものがあり、資料の購入・取り寄せにかかる予算が残ったことにより、次年度使用額が発生した。これは、25年度請求分とともに、25、26年度の旅費や資料購入・取り寄せ資金に充てるとともに、各種収集データをデジタル化する際に必要なソフト(Adobe Acrobat等)の購入資金としたい。
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Research Products
(2 results)