2013 Fiscal Year Research-status Report
シャーロット・ブロンテの一人称小説の形成と発展―18C書簡体小説との関連において
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24720140
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
馬渕 恵里 関西外国語大学, 外国語学部, 講師 (00612912)
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Keywords | シャーロット・ブロンテ / 初期作品 / 語り / 一人称小説 |
Research Abstract |
25年度はまず、出版されている初期作品と、24年度と今年度の英国調査出張で収集した未出版原稿の分析を行い、初期作品における語りの技法・形式の特質や変容についての全体像を整理した。初期作品のうちチャールズを1人称の語り手とする物語をピックアップして語りの特質やその変遷を考察した成果を、10月19日に開催された阪大英文学会第46回大会のシンポジウム「英語のデザインを読む」にて発表した。 その後、初期作品に関する参考文献の追加収集と確認を行い、初期作品の語りを検証するうえで特に注目に値すると思われる作品("The Spell," "Henry Hastings," "Ashworth"など)とそれらに関連する作品("The Green Dwarf," "High Life in Verdopolis," "My Angria and the Angrians"や最初期の"Blackwood's Young Men's Magazine"や"Young Men's Magazine"シリーズなど)について、さらなる分析と考察を進めているところである。 なお、24年度の調査出張で収集した、刊行された4つの小説の破棄された断片のうち、The ProfessorとJane Eyreの草稿についてはすでに分析を行い、「創作の軌跡が示す『語り』の探求―『教授』と『ジェイン・エア』の草稿をめぐって」にまとめた。この論考は『石田久教授喜寿記念論文集』に収録されており26年中に刊行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
24年度に生じた遅れが25年度まで続いているため。ただし25年度の初めに、24年度の進行状況と25年度の年間予定をふまえて申請時の研究計画を見直し新たに立てた研究計画からは、大幅な遅れは生じていない。本研究の第一の目的である、初期作品の語りの技法・特質とその変遷を体系的に考察するところまではおおむね達成できたので、26年度にはその成果を論文としてまとめながら、第二の目的である、シャーロット・ブロンテの1人称小説や1人称語りと18世紀書簡体小説との関連性の解明に取り組みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
24、25年度の研究成果として、初期作品の語りの技法・特質とその変遷について、1人称語りの形成と発展を軸にいくつかの作品を取り上げて2つの論文にまとめ、それぞれ『英語のデザインを読む』(仮題)、『ブロンテ姉妹と男たち』(仮題)内で発表する予定である。その後、本研究の次なる目的である、シャーロット・ブロンテの1人称語り・形式と18世紀書簡体小説の語りの技法や形式との関連性の解明に本格的に着手する。書簡体小説とその形式についての研究だけでも相当な作業が予想されるが、そのなかで多少なりとも今後の研究につながる糸口を掴み、27年度以降に関連学会で発表ができる段階まで本研究を進めたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の未使用額を利用して25年度中に2回英国へ出張し調査を行う予定であったが諸事情により1回のみとなり、旅費と現地調査時に必要となる複写費などが生じなかったため。 26年度の海外調査出張経費かあるいは日本国内で入手できない文献を大英図書館等海外機関から取り寄せる費用にあてる。その他、26年度より18世紀書簡体小説に関する研究を本格的に開始するので、その関連資料・書籍を新たに購入・取り寄せる。 また、これまでに収集した初期作品関連の書籍や各種資料・文献には再入手困難な貴重なものも多数含まれており、収集した文献や資料などのデジタル化による保存が不可欠であるため、その環境整備のために使用したい(例:外付けハードディスク、ScanSnapの購入など)。
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