2012 Fiscal Year Research-status Report
ソヴィエト的主体形成における所有と交換: スターリン期の公式文学研究
Project/Area Number |
24720149
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
平松 潤奈 金沢大学, 外国語教育研究センター, 准教授 (60600814)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ソヴィエト / ロシア / 文学 / 全体主義 / 社会主義リアリズム |
Research Abstract |
NEP期(1921-27年)の文学における所有と交換の問題を扱った今年度は、主に、プラトーノフ『チェヴェングール』(1927-1928年)において、新しい非所有の共同体・人間主体を構築する企図と、その実現の困難がどう描かれているかを考察し、あわせて、NEP期の急進的ユートピア・イデオロギーがその後1930年代にどう変容していくのかを検討した。この研究の途中経過を、スラヴ・ユーラシア研究東アジア学会で報告した(題名“Property and Body in Early Soviet Literature”)。 上記発表においては、家族・女性・異性愛への嫌悪が、非所有のイデオロギーと強く結びついていることに触れたが(異性愛は私有性・個人主義の基盤になるとして否定的に捉えられた)、それと関連して、1920年代から30年代にかけての女性排除の問題についてのこれまでの自分の研究を再考して論文化した(題名 “Уничтожениe тела в ранней советской литературе: женщины, казаки, и большевики в 《Тихом Доне》”)。これは2013年度に北海道大学発行の研究報告集に掲載される予定である。 また、1920年代から30年代にかけての家族、所有、ソヴィエト的主体をテーマにマカレンコとオストロフスキーの作品を論じた論文を推敲して完成させた。これは共著の論集として刊行された(「顔と所有―スターリン体制下の文学にみる個人と親密圏」『講座ユーラシア世界 越境と変容の場 第4巻 公共圏と親密圏』所収)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2012年度は、主に日本の図書館での資料収集などに基づいて、西欧近代史、ロシア史における交換・所有概念の発展に関して理解を深めることにかなり時間を割いた。またロシア帝政期とソ連の状況にかなり連続性があるため、ロシア革命前の所有・交換の問題も十分踏まえる必要を感じた。そこで19世紀ロシアにおける資本主義の発展、それに伴う反資本主義・共同体主義の醸成、貨幣に対する否定的態度の強まりなどについても広く調査した。こうした基礎的研究に時間をとり、さらに所属機関が変わり研究に十分時間を割くことができなかったことなどもあり、計画の達成度は予定をいくぶん下回った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度研究を行ってみて、当初計画どおり時代区分ごとに研究を進めるだけでなく、時期をまたぐ議論も必要と感じられたので、暫定的な時代区分に沿った本研究の年次計画については、少し柔軟に対応して行きたいと考えている(2014年、2015年度の計画に含まれるものの一部を2013年度に行う、あるいは2013年度の計画に含まれるものの一部を以後にまわすなど)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、ロシアの図書館やアーカイヴでの資料調査・収集のために一番多く予算を割きたい(全体の7割程度)。その他、日本国内の図書館での資料調査・収集のための旅費、学会発表に参加するための旅費、書籍購入費、校閲費(英語かロシア語で原稿を書いた場合)などに研究費を充てる予定。
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