2012 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるフェデリコ・ガルシア・ロルカの受容研究‐戯曲を中心に‐
Project/Area Number |
24720155
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
森 直香 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (60611829)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フェデリコ・ガルシア・ロルカ / ロルカ作品の日本における受容 / スペイン文学 |
Research Abstract |
本研究は、スペインの詩人・劇作家フェデリコ・ガルシア・ロルカ(1898~1936)の作品の日本における受容についての初めての体系的研究である。彼の作品はセルバンテスと並んで世界中で愛読されているが、日本における受容についての細かい検討は行われていない。本研究ではロルカ作品の受容を概観した上で、当時の書評・劇評・論文等を参考にしながら日本人読者が何を期待して作品を読み、どのような点を評価しているかを考察し、受容を推進した要因を明らかにすることを目的とする。そのために、文献資料の検討を中心に、1)ロルカ作品の受容に影響を及ぼした要因、2)日本人読者の解釈、3)ロルカ作品の普遍性、4)ロルカ作品の世界観と日本文化との共通点の4点に特に焦点を当てる。2012年度は、1)と2)の課題を中心に取り組んだ。具体的には、初期受容期(1950年代)の日本において急激にロルカの作品受容が進んだ理由と、日本人読者がロルカ戯曲のどのような点に魅力を感じていたかについて考察を行った。 その結果、ロルカ受容を推し進めた要因として、①スペイン国外でロルカ作品が高く評価されていたこと、②新劇の劇団によるロルカ戯曲の上演、③『ロルカ選集』の刊行の3つが挙げられることが明らかとなった。また、初期受容期の日本人読者がロルカ戯曲に対して感じていた魅力については、①既存の演劇と異なる新しい形式、②詩的言語、③スペイン的要素、④独自の悲劇観という4つの共通点があることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度は、1)ロルカ作品の受容に影響を及ぼした要因、2)日本人読者の解釈について考察を行い、1950年代に急激に作品受容が進んだ要因、日本人読者がロルカに対して持っていた一般的なイメージを明らかにすることができた。さらに、その成果は論文、学会発表の形で公表し、十分に当初の目標を達成できたと考えられる。成果については以下のとおりである。 ・日本におけるロルカ作品の初期受容を概観し、受容を促進した要因について考察し、論文としてまとめた(「日本におけるフェデリコ・ガルシア・ロルカ作品の初期受容概観」『スペイン現代史』第21号、2012年、pp. 25-37) ・初期受容期における日本人読者によるロルカ作品の解釈を戯曲を中心に概観し、国際学会にて発表(“La recepcion de Bodas de sangre en Japon”(日本における『血の婚礼』受容), el XIX Simposio de la Sociedad Espanola de Literatura General y Comparada (SELGYC) (スペイン文学・比較文学学会SELGYC、第19回大会)、2012年9月21日、於 スペイン国立サラマンカ大学)。 ・三島由紀夫のロルカ作品の解釈について考察し、論文としてまとめた(“Lorca y Mishima”(ロルカと三島), Hecho teatral,12, 2012, pp. 485-511)。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、引き続き日本人読者がロルカ作品をどのように受け止め、解釈したかについて研究を進める。読者には研究者、翻訳者も含み、書評、ロルカ研究の論文・書籍、ロルカ戯曲の公演評、ロルカ作品の日本語への翻訳を中心に検討する。ロルカ戯曲に対する観客の反応は国籍によってさまざまであり、たとえば、『血の婚礼』初演(1933年3月8日マドリード)はスペインで絶賛されたものの、ニューヨーク公演(1935年2月8日)は失敗に終わり、批評家の多くは原因が文化の違いにあるとした。スペインの観客と日本の観客の受け止め方の違いと類似点を洗い出すことで、ロルカの扱うテーマがどの程度普遍性を持っているか、また、ロルカ作品の持つ異国的要素は日本の観客にとって魅力になりうるのかどうかを考察する。 さらに、ロルカの死が作品の受容、解釈にどのような影響を与えたかについても考察を行う。ロルカがスペイン内戦直後に反乱軍側によって銃殺されたことで、彼はファシズムの犠牲者、民主主義のための殉教者というイメージでとらえられるようになったが、そのようなイメージが、彼の悲劇作品の解釈にどのような影響を与えたかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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