2012 Fiscal Year Research-status Report
戦後フィンランドの民族文化研究における「スラブ文化影響説」と政治の関係
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24720157
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
石野 裕子 金沢大学, 先端科学・イノベーション推進機構, 博士研究員 (70418903)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 民族文化 / フィンランド / スラブ文化 / 北欧 / ナショナリズム / 第二次世界大戦後 / ソ連 / 文化表象 |
Research Abstract |
初年度にあたる平成24年度は、8月に約2週間、フィンランドのフィンランド文学協会の図書館及び文学資料館にて同協会の会報誌及び議事録を閲覧し、第二次世界大戦前から戦後にかけての民族文化普及に関する協会の方針及び会長及び副会長の演説に見られる民族文化観を検討した。特に1930年代から1950年代にかけての、民族文化の扱われ方についての言説分析を行った。同協会の予算配分の変化についても注目し、その変化と言説との関係についての考察も行った。また、現地協力者との交流を通じて、フィンランドにおける本課題に関する研究状況についての知見を得た。次に国立図書館にて、「スラブ文化影響説」について言及した研究書及び研究誌の文献収集を行った。この文献収集にあたっては、民俗学者の研究だけではなく、歴史学者、政治学者といった他分野の研究に範囲を広げて行った。以上の海外調査に先立って、フィンランド民族文化研究の推移を把握するために、先行研究の整理を行い、海外調査の効率化を図った。海外調査後は、収集した資料の分析を行った。また、本研究の土台となる博士論文の出版(石野裕子『「大フィンランド」思想の誕生と変遷―叙事詩カレワラと知識人』岩波書店、2012年)及び研究論文(「両大戦間期のフィンランドにおける民族文化表象と政治―1935年の『カレワラ』百周年と3つのカレワラ祭を題材に―」『北欧史研究』29号、バルト=スカンディナヴィア研究会、2012年7月)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載したように、海外調査における資料収集及び資料分析がほぼ順調に進展しているので、本研究目的の達成はおおむね順調に進展しているといえる。次年度も今年度と同様に研究を実施していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も交付申請書に記載した計画の通りに課題に取り組む予定であるが、海外調査は実施しない。そのかわりに本研究を国際的な基準にまで高めるために国際学会での発表を行い、学術的意見を伺う。また海外調査を実施しないが、必要な文献は現地の協力者に依頼して送付してもらう予定である。さらに、平成24年度に実施した海外調査で収集した資料分析に努め、その成果を論文や研究会で発表し、研究の精密化を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は海外での資料収集の予算が余ったため、当該助成金が生じた。次年度は当該助成金を資料収集取り寄せの費用、取り寄せのための人件費に当て、研究に活用していく計画である。また、次年度に計画していた海外調査費用を海外学会発表費用に当て、研究の推進を図る。
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