2012 Fiscal Year Research-status Report
多様な可能性に開かれた会話活動への適応を支える生態学的および認知的基盤の探索
Project/Area Number |
24720169
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
名塩 征史 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 助教 (00466426)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 会話活動 / 共同作業 / 思考/認知の共有 / 環境/状況 / 捉え直し / 認知効果 |
Research Abstract |
平成24年度では、日本人3~4名による雑談を収録した元データの観察と分析を通して、次のような現象に注目し、さらなる分析と考察を進めてきた。まず、本研究の焦点である「多様な可能性に開かれた会話において各参与者が複数の可能性をどのように適切に切り盛りしているのか」について、各参与者が会話の場に実在する環境(ヒトやモノの配置)をどのように捉えるかという認知が重要な手掛かりとなることを明らかにした。この知見は、会話の基調とも言える言語的な発話が、その場で何をすべきかを直接伝達しているのではなく、その発話が伝達する情報が周囲の環境・状況の捉え直しを促し、そうした捉え直しがその時その場の行為の可能性を特定するという生態心理学的な観点を会話研究に導入する意義を示唆するものである。 また、もう一つの方向性として、共同作業を行う参与者たちが互いの思考/認知をどのようにして共有するのか、またその共有過程に会話がどのように関わっているのかを考察した。この考察を進めるにあたって、本研究では新たな実験を行ない、日本人2~3名による共同作業を観察・分析の対象データとしてビデオカメラで収録した。当該年度における分析・考察の結果として得られた知見には、大きく分けて次の2点が挙げられる。第一に、参与者間で互いの思考/認知の共有は、互いの推論を言語的/非言語的に表出し伝え合いながら試行錯誤の末に達成される。相手の認知に関する一つ一つの気づきや解釈は、常に共同作業の目的達成に向けてポジティブな効果をもたらすわけではない。第二に、各伝達がもたらす認知効果には、観察可能な現象の記述を通して明らかにできるような質的な違いが存在する。この知見は、会話活動/共同作業の認知的な基盤を経験主義的で質的な研究手法によっても十分に記述可能であることを示唆するものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しいデータの収録も含め、実験・観察・分析を順調に進めることができた。しかし、今年度はで分析と考察に時間がかかり、また、予期せぬ発見等によっていくつか追加の実験の実施を余儀なくされたこともあり、研究の成果をまとめた学会発表や論文の投稿までには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度における分析と考察の結果をまとめ、関連する学会や研究会において研究成果を公開することに専念する。そうした学会、研究会で得られる他者からの指摘を踏まえ、さらに議論を洗練し、また、先行研究における知見も参考に、理論的な考察も進めていきたい。これらの成果を次年度末には各学会誌等に論文として投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額として繰り越される47万円強の経費は、平成25年度9月に開催される日本認知言語学会、および認知科学会での研究発表をはじめ、平成25年度における研究成果の公開や資料収集を目的とした出張費として大部分を使用する。
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Research Products
(2 results)