2013 Fiscal Year Research-status Report
多様な可能性に開かれた会話活動への適応を支える生態学的および認知的基盤の探索
Project/Area Number |
24720169
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
名塩 征史 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 研究員 (00466426)
|
Keywords | 会話活動 / 活動システム / 抽象的な身振り / 環境・状況 / 情報の探索と抽出 |
Research Abstract |
平成25年度では、平成24年度に引き続き、以下の点についてさらなる分析と考察を行ない、その成果を各学会/研究会での発表、および研究論文としてまとめた。 まず、その場で何をすべきかを明らかにするのは、発話から得られる言語的な意味ではなく、むしろ活動主体を取り巻く周囲の環境・状況に潜在的に備わる情報の捉え直しであることを提唱した。活動主体は、目標となる活動に必要な基盤として周囲の〔ヒト〕と〔モノ〕を選択的に関連づけ、当該の活動システムを抽出している。また、その活動の中に複数の主体の同調を必要とする相互行為が含まれる場合には、特定の活動システムを主体間で同期的に抽出する必要があり、発話は、「いつどのシステムを抽出するか」を主体間で共有すると同時に、当該の活動システムを始動させるきっかけとして重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 また、平成25年度からは、会話活動中の語りに注目し、その語りに伴う身振り(ジェスチャー)についても分析と考察を行った。特に語り手がある事柄について自己の経験をもとに意見を述べるという抽象的な語りに伴う身振りに焦点を当て、そうした抽象的な身振りが自己志向的に繰り出されることによって、語り手自身の言語化(語りの適切な組織化)に貢献していることを指摘した。さらに、そうした語りと身振りが会話活動中に生起する場合には、他者から観察可能な事象として捉え直される必要があり、本来は自己志向的であるはずの抽象的な身振りが、相互行為上でどのような事態を引き起こしうるのか、その可能性についてさらなる分析が必要であることを主張した。この点について平成25年度では、語り手の自己志向的な身振りが、他者から適切に受け流されることなく、予期せぬ反応を引き起こすことで、現行の語りが頓挫してしまう事例を示し、語り手の身振りを巡る他者の態度にも重要性を見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに収録したデータを新たな切り口によって捉え直し、様々な可能性について十分に検討することができた。また前年度には十分に達成されていなかった研究成果の公開にも力を入れ、いくつかの研究発表と論文執筆を行うこともできた。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度においては、引き続き研究成果の公開に力を入れつつ、研究成果報告会やシンポジウムなどを開催することによって、他の研究者との意見交換を活発に行い、周辺分野との整合性を検証していきたいと考えている。また本研究の成果を活かした次の研究への発展を見越して、新たなフィールドでのデータ収集に着手する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に実施されたデータ収集に予定よりも経費がかからなかったため。 また研究の進捗状況との兼ね合いで、いくつかの研究発表や資料収集を次年度へと延期したため。 次年度使用額として繰り越される117万円強の経費は、平成26年度9月に開催される日本認知科学会、日本認知言語学会、社会言語科学会への参加、および研究成果報告会/シンポジウムの開催にかかる必要経費として使用する予定である。また、平成26年度に新たに実施されるデータ収集(フィールドワーク)にかかる必要経費としても使用する予定である。
|
Research Products
(7 results)