2014 Fiscal Year Research-status Report
多様な可能性に開かれた会話活動への適応を支える生態学的および認知的基盤の探索
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24720169
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
名塩 征史 静岡大学, グローバル改革推進機構, 助教 (00466426)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 職業談話研究 / 身体的思考 / 言語/分析的思考 / 環境と行為の切り結び |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では、前年度までの研究成果を生かした応用研究へと一歩踏み出し、その成果を各学会/研究会での発表としてまとめた。 平成26年度では、実際の社会活動を研究データとして使用した。具体的には、理容室における〔理容師ー被理容者〕間コミュニケーションの分析に着手し、その実践事例を基に文化人類学、言語人類学、ジェスチャー研究、マルチモーダル分析といった分野の知見の統合を試みた。この試みによって、日常的な言語活動とそれとは目的を異にする別の身体的活動の並行・両立(例えば、「世間話をしながら髪を切る」など)の実態が明らかとなり、その並行・両立の基盤として、主に発話の組織化に志向する分析的思考と主に身体活動の調整に志向する身体的思考の切り結びによって創発する動的な活動システムの存在を示唆した。 また、上記のような新たなデータの導入により、前年度までの多人数会話研究との比較が可能となり、主体と環境との有機的な関連については新たな知見を得ることができた。たとえば理容室はすでにその行為に特化した環境としてデザインされた場であるため、理容師をより理容師らしくする行為は理容室における様々なモノや空間の配置に制限されながらも効率よく実践されていた。一方、特定の行為に特化してデザインされたわけではない多人数会話の場においては、個々の行為が周囲の環境を必要に応じてデザインし直し、たとえば過去の経験を語る場面では、実際にはその場にない環境やモノが、あたかもその場にあるかのように振る舞いによって臨場感を演出され、他者の志向をその語りの共創へと導いていた。このように環境と行為の関連性における「環境から行為へ」「行為から環境へ」という2つの方向性を具体的な事例を基に分析・記述することができた 今後は、理容行為に止まらず、他の社会的/職業的活動の実践へと分析の範囲を広げていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の後半に所属先の異動があり、それに係る準備や手続き、また異動後の手続きや新たな業務に時間を費やさざるを得ない状況となった。そのため、本年度に予定されていた論文の執筆を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
所属先の異動を理由に事業期間の延長が認められたため、次年度では主に研究成果を論文としてまとめる作業に専念する予定である。また、本年度の研究をきっかけに新たな研究協力者を得ることができたため、他の研究者との連携を強め、より規模の大きい研究計画の作成へと結びつける準備を進めていく。
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Causes of Carryover |
現在の所属先への異動に伴い、平成26年度後期においては、異動の準備と手続き、また異動後の手続きと業務に時間を費やすこととなったため、予定されていた研究作業の幾つかに着手することができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用学として繰り越される93万円強の経費は、本年度に予定されていて実行することができなかった研究活動に使用する予定である。具体的には、平成27年度に開催される認知科学会、日本認知言語学会、社会言語科学会への参加、および研究成果報告会/シンポジウムの開催に係る必要経費として使用する。また、今後の新たな研究計画の作成に向けての意見交換会等の開催や、新たなデータ収集(フィールドワーク)にかかる必要経費としても使用する予定である。
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Research Products
(4 results)