2012 Fiscal Year Research-status Report
活動の中断と再開:日常会話の「一貫性」についての会話分析研究
Project/Area Number |
24720176
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安井 永子 名古屋大学, 文学研究科, 講師 (30610167)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 会話分析 / 活動の中断と継続 / 一貫性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日常会話の「自然な流れ」、つまり「一貫性」の原理を、会話分析の手法で解明することである。日常会話のあらゆる偶発性の中での一貫性の達成を解明することを目的とし、会話中の活動の中断とその再開場面について、参与者の言語・非言語行動だけでなく、会話における参与構造の変化も考慮する。初年度である平成24年度は、データ収録と、参与構造の固定された場面における音声言語行動の分析への着手を行った。主に以下の3点である。 (1)データ収録:日常生活において、会話の中断や割り込みが起こる様々な状況を分析するため、①参与構造が変化しない場面(参与者全員が定位置に座って会話に従事する場面)と、②参与構造が変化する場面(参与者がそれぞれ作業に従事するため、定位置から離れて場所移動を自由に行う場面)との両方において、合計8時間のデータ収録を行った。 (2)音声言語のみの分析:既に収録済みであったデータの中で、上記の①のように参与構造が変化しない状況下での会話の中断・再開場面の音声言語の分析に着手した。特に「語り」の場面におけるデータ分析においては、活動を再開させる際の接続詞の使用や言語行動に関してまとまった結果が得られたため、その成果を第30回英語学会(11月)とその論文集JELS30(3月)、及び、MiMI学会(11月)とAAAL学会(3月)にて発表した。 (3)研究会の主催:11月にJurgen Streeck氏(テキサス大学オースティン校)、1月にLorenza Mondada氏(バーゼル大学)を招いてデータセッション研究会を行い、それぞれから提供されたデータに関して他の参加者たちと議論を行う場を設けたことで、上記②のタイプのデータで身体行動を含めた分析を行う際の着眼点や注意点に関して知見を広げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の計画は、合計20時間のデータ収録及び、収録データの書き起こしであった。データは、参与者構造が変化しない場面・変化する場面のそれぞれから収録することはできたものの、現時点での合計収録時間は8時間であり、目標収録時間数の20時間を達成するには、まだ追加のデータが必要である。また、収録したデータについても、全ての書き起こしは終えられていない。これは、既に収録済みであったデータの書き起こしを行い、その分析を行っていたためであるが、新たに収録したデータの書き起こしにも直ちに着手する必要がある。中断された語りの再開時における接続詞の使用に関しては、既に収録済みであったデータをもとに観察結果をまとめているため、今後のデータ分析における手がかりとして使用できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、初年度予定していた量のデータ収録と書き起こしを終わらせるほか、初年度に収録を終えたデータの分析に着手していく。データ収録では、残り10時間程度の収録を終えるため、実験室収録と自然会話場面の収録の両方を行う。収録後は、進行中の活動の中断、挿入された活動の終結手続き、元の活動の再開手続き、それぞれの段階に当てはまるデータ断片を選び出し、書き起こしを行う。データにおける言語・非言語行動の詳細な書き起こしの過程は、データを詳細に観察できる重要な過程にもなるため、分析のポイントとなる現象を同時に観察しながら書き起こしを行うことで、その後の分析にもつなげていくことが重要である。また、初年度の分析においては音声言語に主に着目したが、今後は身体行動も詳細に記述することで、活動の再開手続きをマルチモーダルに分析することに集中していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品・消耗品:データ収録には、データ記録用メディアが更に必要となるほか、データ分析用にノートパソコンも新たに購入する。また、分析の際に参考となる会話分析・言語学関連和洋図書(10冊×10千円)も購入する。 旅費:国際学会に2度(8月IIEMCA学会、9月IPrA学会)、国内学会(3月JASS学会)に一度は出席し、本研究課題に関連する研究の成果発表のほか、最新の研究動向の調査を行う。また、他の研究者の知見や助言を参考にするため、関連研究会のデータセッションに出席し、データを持ち込んで議論を行うことも予定している。 謝金:データ収録の被験者や、国内外でのデータ収録を依頼する補助員に支払う謝金が必要となる。
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