2013 Fiscal Year Research-status Report
現代中国語における<可能>の言語化と意味派生のメカニズム
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24720177
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
勝川 裕子 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (40377768)
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Keywords | 現代中国語 / 可能表現 / 可能の助動詞 / 可能補語 |
Research Abstract |
現代中国語における<(不)可能>は如何に言語化されるのか。 本研究は複雑に分化の進む中国語の可能表現が何を意味的根幹として成立し、其々がどのような派生経路を辿るのか、またその派生が如何なるメカニズムに支えられているのかを明らかにすることを目的としており、種々の可能表現を統語的・意味的観点から考察することを通じて、中国語における<可能>という文法範疇をより合理的且つ包括的に体系化することを目指すものである。 以上のような着想を背景に、本年度はBybee et al.1994を参照しながら、<可能>を表わす助動詞“会/能”と可能の意味(具体的には<能力>、<条件可能>、<許可>、<認識的可能>の4タイプ)がそれぞれ如何なる関係にあり、どのように意味拡張しているかを追究した。また、中国語の可能表現において一大分野を占める<結果可能>―即ち可能補語“V得R/D”形式がこれらの派生経路とどのように関与しているかについて考察した。 研究を進めるにあたって、可能研究が比較的進んでいる日本語との対照を行なった。日本語の可能表現は動詞の意志性に深く関わり、無意志動詞は可能表現に用いられにくいことが指摘されている。これに対し、現代中国語においても、助動詞“能”が表わす<能力可能>や<条件可能>、可能補語が表わす<結果可能>などにもこのような傾向が見られる一方、<属性可能>や<認識的可能>を表す“会”はあくまでも属性としての「能力」が発現可能な状態にあることを表わす、或いは見込むため、望ましくない事態を表わす動作・状態とも共起可能である。また、意志性による制限はほとんど見られず、無意志動詞も可能表現に用いられることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はコンテキストを考慮に入れた用例収集及び中国語母語話者によるインフォーマント調査を重点的に行う必要がある。しかし、本年度は報告者(勝川)の出産育児により、2012年11月17日から2013年8月31日まで産前産後休暇・育児休業を取得したため、研究実施期間が大幅に短縮されてしまった。 また、これにより申請当初予定していた国外調査を遂行することができず、インフォーマント調査及び関連する分野の研究者との意見交換等を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
構築中のデータベースを補完しながら、平成26年度は主に可能補語“V得R/D”形式の生成条件及び可能表現とモダリティ(modality)の関連について考察していく。 可能補語“V得R/D”形式は生産性が高く、その多くは結果補語(R)や方向補語(D)から生成される。これについては、これまでの研究でも夙に指摘されてきたが、その具体的な生成条件については未だ明確な提示はなされておらず、教学上においても、可能の助動詞“能”との異同点の解明が待たれる問題である。 個別的なテーマとしては、以下の課題を設定し、取り上げる予定である。 (1)可能補語“V得R/D”形式の生成条件とそのメカニズムについて (2)モーダルな助動詞“会/能”形式と非モーダルな可能補語“V得R/D”形式
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は報告者(勝川)の出産育児により、2012年11月17日から2013年8月31日まで産前産後休暇・育児休業を取得したため、研究実施期間が大幅に短縮されてしまった。 また、これにより申請当初予定していた国外調査を遂行することができず、インフォーマント調査及び関連する分野の研究者との意見交換等を行うことができなかった。 本年度遂行することができなかった中国語母語話者によるインフォーマント調査を夏と冬の2回行う。調査地は中国・北京を予定している。本研究は中国語母語話者の<可能>に対する認知パターンを明らかにすることを目的としており、複雑に分化している可能表現の使用選択、分布実態を解明するためには、本調査は欠くことができない。
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