2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720180
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
重野 裕美 広島大学, 教育学研究科(研究院), 助教 (70621605)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 危機言語 / 文法記述 / 琉球諸語 / 奄美語 |
Research Abstract |
琉球諸語研究は,日本語の文法範疇を基盤としながら発展し,独自の研究手法・用語に従った記述がなされてきた。その慣習は検証されることなく引き継がれているため,他言語との比較は困難を極める。本研究では他集落,他言語との比較研究も念頭に入れ,バランスのとれた章立て構成や文法記述の手法を定めるための基盤研究をおこなう。具体的な研究項目は,①博士論文で取り扱った琉球語奄美方言敬語法の研究成果の発展,②フィールドワークによる総合的な文法記述書の作成,そして③地元還元・方言継承に資することができる一般向け解説書の作成,の3つである。 平成24年度の研究実績は次の2点である。(1)「博士論文で取り扱った琉球語奄美方言敬語法の研究成果の発展」として人間関係による場面差に着目した「奄美大島龍郷町浦方言の敬語形式の運用法-人間関係の差異に着目して-」『広島大学日本語教育研究 第23号』(広島大学大学院教育学研究科日本語教育学講座),(2)「北琉球奄美大島龍郷町浦方言の動詞活用表-中間報告-」『平成24年度中期計画達成プロジェクト 人文・社会科学を主体とした先端的琉球・沖縄学の次世代研究者の育成・研究推進プロジェクト成果報告書 Vol.2』(琉球大学国際沖縄研究所)。 (1)に関しては,本研究の具体的な研究項目①「博士論文で取り扱った琉球語奄美方言敬語法の研究成果の発展」に関する研究成果である。敬語形式の体系を整理した上で,その形式がどのような対者場面であらわれるかについて詳細に報告したものである。琉球諸語の敬語研究では人間関係に着目した運用法の報告は少ないため,日本語との比較研究をするためにも有意義な資料を提供することができたと考える。(2)に関しては,研究項目②「フィールドワークによる総合的な文法記述書の作成」のための成果報告の一部である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度を研究項目に沿って述べる。 具体的な研究項目は,①博士論文で取り扱った琉球語奄美方言敬語法の研究成果の発展,②フィールドワークによる総合的な文法記述書の作成,そして③地元還元・方言継承に資することができる一般向け解説書の作成,の3つである。 平成24年度は,第一段階として「琉球諸語の文法範疇認定のための先行研究・文献調査」,第二段階として「文法記述の手法や記録・分析に関する情報収集」することを目的とした。 第一段階である先行研究の整理や文献調査は既に完了している。また,第二段階の文法記述に関する情報も積極的に収集した。具体的には,随時,本研究に関連する勉強会や研究会に参加したことがあげられる。危機言語として記録・保存することも考え,精密な録音機器や音声分析ソフトの操作方法や文法記述書作成のための知識や技術・分析手法を習得するよう努めた。 さらに,来年度の第三段階として計画している「フィールドワークによる琉球語奄美方言の文法項目調査と自然談話資料の収集」を見据え,奄美大島龍郷町浦方言を中心とした準備調査も適宜おこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策を年度計画に沿って述べる。 平成25年度は第3段階として,フィールドワークによる琉球語奄美方言の文法項目調査と自然談話資料の収集を行う。文法記述書は,音素から複文構造までの言語体系全体の概要を示す。文法記述の基本単位(音素・音節構造・語・品詞分類等)を定義するため,奄美大島浦集落を中心とした臨地調査を行う。特に,中舌母音や語頭の喉頭化音の有無が語の弁別に影響するため,音節構造を構築する際,注意を払う。対象地域の特色ある文法事項を可能な限り取り上げるために,対話資料や昔話も収録し,より自然談話に近い資料の収集に努める。 さらに,第4段階として,調査から得られた資料に基づいた文法範疇の定義・認定・分析を行う。調査から得られた資料に基づき,対象地域の文法範疇の定義や認定を行う。第3段階と第4段階は,相互に補充・補完する関係となる。隣接する集落や他の琉球諸語の調査も行うことで,奄美方言の特色を浮き彫りにする。 平成26年度は第5段階として,類型論的視点に基づいた文法記述書の作成する。 例文は,分節ごとに分かち書きを行い,一行目に国際音声字母による音韻表記(IPA表記),二行目にグロス(文法的意味)をつけ,三行目に日本語による直訳または意訳を記す。「=」は接語境界,「-」は接辞を示す。グロスのつけ方や例文の提示方法については,マックスプランク進化人類学研究所のLeipzig Glossing Rulesを利用する。 さらに,第6段階として,一般向け解説書の作成する。言語研究者だけではなく,琉球諸語に興味をもつ人や琉球語話者に読みやすくするため,内容を容易にした一般向け解説書を作成する。表記法は,将来,話者自身による記録を実現するため,「琉球諸語表記法プロジェクト」で作成する予定のカタカナ表記を利用する。例文は,より話者の生活実態に沿った内容を選定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画を今後の研究計画に沿いながら述べる。 平成25年度は第3段階として,フィールドワークによる琉球語奄美方言の文法項目調査と自然談話資料の収集を行う。また,第4段階として,調査から得られた資料に基づいた文法範疇の定義・認定・分析を行う。調査から得られた資料に基づき,対象地域の文法範疇の定義や認定を行う。第3段階と第4段階は,相互に補充・補完する関係となる。隣接する集落や他の琉球諸語の調査も行うことで,奄美方言の特色を浮き彫りにする。 以上の計画を実行するために,研究費として平成25年度は物品費を100,000円,旅費として600,000円申請する。平成25年度は文法項目調査・談話収集調査を中心におこなうため,旅費を多く申請することとなる。 平成26年度は第5段階として,類型論的視点に基づいた文法記述書の作成する。さらに,第6段階として,一般向け解説書の作成する。言語研究者だけではなく,琉球諸語に興味をもつ人や琉球語話者に読みやすくするため,内容を容易にした一般向け解説書を作成する。平成26年度は物品費を100,000円,旅費として600,000円申請する。平成26年度も文法書作成のため引き続き文法項目調査・談話収集調査を中心におこなうため,旅費を多く申請することとなる。
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