2012 Fiscal Year Research-status Report
文法性判断のずれ及びぶれの発生メカニズムの解明および解消方法
Project/Area Number |
24720181
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
森田 久司 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (30381742)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | WH疑問文 |
Research Abstract |
母語話者の能力の一つに、母語の文法性判断が含まれる。しかし、時に母語話者間で異なった判断をすることがあり、また、同母語話者自身も時に異なった判断をすることがある。このような文法性のずれやぶれが顕著に見られるWH疑問文における文法現象、インターヴェンション効果とWH島効果、について科学的説明を探求することが本研究の目的である。 1年目の成果として、二つのうちのインターヴェンション効果について、統語的アプローチ、非統語的アプローチを比較した。もし、上の効果が非統語的現象であれば、文法性判断のずれやぶれが容易に説明できる。しかしながら、統語的アプローチでも文法性のずれやぶれを説明することができることが判明した。すなわち、WH疑問文については、日本語の場合、見かけ上区別がつかないが、2種類の疑問文があり、どちらの疑問文で例文を判断するかによって、文法性判断が変わるのである。 では、より具体的に、2種類のWH疑問文とはどのようなものかというと、ひとつは、WH疑問詞を演算子と考え、それを移動させることにより、命題の集合を派生させる。その疑問を尋ねられたものは、その命題の集合から、正しい命題を選択し、それを発話することにより、答えとなる。もうひとつのWH疑問文は、その疑問詞は演算子ではなく、変数に過ぎない。したがって、このタイプの疑問文では、空所ある文を質問者が尋ね、その空所を穴埋めすることが、応答者の役目となる。 疑問詞が演算子かどうかということで、統語的違いが予測される。たとえば、疑問詞が同じ文に二つ以上ある場合、その答えは、一つ以上のペアで答えることができることが知られているが、これは、疑問詞が演算子の時にしか観察されないと予測され、実際に、一つのタイプのWH疑問文では見られなかった。 2年目の計画として、上記の事実を学会発表などを通じて、より多くの人に向けて発信することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
インターヴェンション効果が統語的現象であり、それにまつわる文法性判断のずれやぶれは、見た目上区別のできないWH疑問文が2種類あるからだという主張を固めるだけでなく、その一部の成果を3つの国際学会で発表することができたため、ある意味で、2年目に行う計画を先取りすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目においては、インターヴェンション効果が統語的現象であるということを示すことができたが、WH島効果については、学会発表なので一部の言及はあるものの、体系的な取り組みがまだできていないので、それを論文などの形で発表することが、2年目の計画である。 さらには、2種類のWH疑問文が、日本語では見分けがつかないが、英語などの疑問詞が目に見えるかたちで動く言語は、違いをみせる。たとえば、What did Mary buy?とMary bought what?である。後者は、一般的に、Echo(おうむ返し)疑問文と呼ばれている。この2種類が日本語で発音上見分けがつかないから、文法性判断のずれがぶれが生じると主張してきたが、必ずしも聞き返す必要のないときにもMary bought what?のような疑問文を尋ねることが英語や日本語できることがわかった(たとえば、クイズ番組などで)。そうなると、WH疑問文には、実は3種類あるということが予測される。しかも、その3番目のWH疑問文の形は、英語と日本語でだいぶ違う。英語では、Echo疑問文をもとに、3番目のWH疑問文を生み出したと考えられるのに対し、日本語では、WH疑問文がもとであったと考えられる。そこで、2年目前半は、その証明に時間を費やし、その成果を夏以降に口頭発表や論文等で示すことができたらと思う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1年目で、書籍、コンピュータ等の調査に必要な備品は大体そろえたので、2年目では、海外を含む口頭発表などの旅費等に主に使用する予定である。また、可能であれば、研究の成果をネット上に公表するために、HPの立ち上げなどを検討したい。
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