2013 Fiscal Year Research-status Report
クスコ・チンチェロ村におけるスペイン語とケチュア語の「言語接触」に関する研究
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24720182
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
ガルシア アナ・イサベル 東京大学, 教養学部, 准教授 (20584072)
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Keywords | 言語接触 / スペイン語 / ケチュア語 / 言語学 / クスコ / ペルー |
Research Abstract |
2013年4月12日、パリ第五大学Carola Mick教授と共に、「第4回アンデス・スペイン語学会」にて、アンデス・スペイン語の代名詞体系について、再構築された代名詞体系を呈するチンチェロのスペイン語と、リマ市におけるアンデス地方からの移住者のスペイン語を比較した発表を行った。後者のスペイン語では、アンデス地域における変異パタンと沿岸地域の特徴である語源的パタンの混合状態を示している。 2013年10月3日には、セルバンテス文化センター東京にて実施された「日本におけるスペイン語・スペイン語圏文化についての国際会議」にて、“ya…ya”重複構文についての発表を行った。本発表は、マドリッド自治大学Azucena Palacios教授と行いました。本研究は後にジョン・ベンジャミン社の学術雑誌Spanish in Contextに掲載予定である。そこでは、アンデス・スペイン語における“ya”の重複には断定的フォーカス機能(verum focus)を持ち、口頭談話と会話において非常に生産的であることを明らかにした。 2014年1月21日、「スペイン言語学会(SEL)第43回国際シンポジウム」の「言語接触の部」にて、アンデス・スペイン語の三人称弱勢代名詞体系の変化について発表を行った。三人称弱勢代名詞体系は再構築された結果、直接目的語を示すために唯一“lo”を使用するか、あるいは以下のパラメーターに関連して代名詞の省略(音声的にゼロ表示)がなされるということを明らかにした:a) 談話的パラメーター:言及を繰り返す必要がないため談話のトピックはゼロとして示される一方、 “lo”で示されるのは、トピックの変更があったり、特に後置される指示対象をともなう目的語重複構文などにおいて、指示対象を際立たせたい場合である。b) 社会的パラメーター:インフォーマントの知識レベルが高ければ高いほど、標準規範に近づこうとするため、高い頻度で“lo”を使用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. フィールドワーク関連活動 2014年2月ペルーへ赴き、クスコ市でのフィールドワークを完成させ、農村(ケチュア語が優勢のチンチェロ)と都市(スペイン語が優勢のクスコ)におけるアンデス・スペイン語の多様性を比較するため、全部で20件のインタビューをクスコ県の移住者に対し、更に実施した。また、Centro Tinkuにて100時間のケチュア語集中講座を受講し。 2. 調査および結果報告に関連する活動 学会での研究報告と論文発表を行っているほか、私の調査進捗の中で、2つの重要な発見を確認しつつあると考えている。 a) アンデス・スペイン語において発見した文法的変化は、ケチュア語の影響と強い関係があるが、この影響は直接借用のように発生したのではなく、スペイン語の文法形式にケチュア語の意味論的、統語論的特徴が伝わり、新しい形式が生み出されていったものである。例えば、過去完了は、スペイン語の標準的な用法として使われるが、ケチュアの接尾辞ーsqaがそうであるように、未経験の過去の事象へ言及するのにも使われる。これは、我々が調査の基礎を置く、Thomason (2001) 及びJarvis & Pavlenko (2008)の理論を証明するものである。当理論によれば、アンデス・スペイン語のような本来的な口頭言語では、2言語併用者は、類似性が見受けられる部分において自身の第一言語の意味論的特徴を第二言語に伝えることで、彼らのコミュニケーション上の必要性を満たしているのである。 b) 話者は、このようなやり方で、語用論的且つ談話的な開拓を行っている。例えば、話者が新しいトピックを開始したいか、指示対象を強調したい場合に、目的語のマーカーとしてスペイン語の人称代名詞“lo”を使用する。以上述べたような現象のように、会話において展開される現象を分析するため、今後も同様に語用論的仮説を考慮に入れることとする。
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Strategy for Future Research Activity |
調査を継続的に進め、チンチェロのスペイン語コーパスにおける過去時制を研究する予定である。2014年2月にクスコで収集したデータを文字化し、既に研究済みの変化(代名詞体系、“hacer+不定詞”を使った使役構文、“ya…ya”の重複用法)についての分析の幅を広げるつもりである。以上のテーマについての論文は、スペイン語と英語で発表する予定である。 2014年7月14~19日に、「第17回ラテンアメリカ言語文献学会(ALFAL)」に参加する予定で、統計分析を実施するモントリオール大学Victor Fernandez教授の協力を得て、 「アメリカ大陸先住民言語との接触におけるスペイン語とポルトガル語」プロジェクトにおいて、チンチェロの代名詞体系についての発表を行う。 2014年8月には、フィールドワークを完了させ、またケチュア語を学ぶ為、クスコへの最後の調査旅行をする予定である。そしてクスコ・サン・アントニオ・アバド大学にて、アンデス・スペイン語についてのセミナーを1つ、リマにあるペルー・ポンティフィシア・カトリック大学では、アンデス・スペイン語と日本でのスペイン語教育について、2つのセミナーを行う。 言語バリエーションについて25時間の博士課程での講義を行うよう、アンティオキア大学(コロンビア)から招致されており、私のアンデス・スペイン語についての調査の進展を紹介する予定である。予定としては、ペルーからコロンビアへ行く。 2014年9月16~18日に京都大学で開催される「アジア大洋州ラテンアメリカ研究協議会(CELAO)第6回大会」での研究報告を提案したところ、承認された。 2014年10月6~8日にメキシコ国立自治大学の文献学研究所にて実施される「第4回変化と言語バリエーション国際会議:言語接触」で発表を行うにあたり、招待を受けた。本会では、チンチェロのスペイン語における過去時制の用法について報告する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
7月には、第17回ラテンアメリカ言語文献学会(ALFAL)に参加する為、ジョアン・ペソア(ブラジル)に1週間の研究旅行をする。 フィールドワークを完了し、クスコとリマの大学でセミナーを実施するため、2014年8月、クスコへの最後の研究調査旅行をする。 研究に必要な参考文献を補充し,また最新のものを入手するため,図書を購入する。 ジョアン・ペソア(ブラジル)に1週間の研究旅行をする。 クスコへの最後の研究調査旅行をする。 図書を購入する。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] Ya…ya en espanol andino: foco aseverativo?2013
Author(s)
Palacios Azucena, Garcia Tesoro Ana Isabel
Organizer
Congreso Internacional sobre el espanol y la cultura hispanica en Japon (http://palabras.jp/images/programa_congreso.pdf)
Place of Presentation
東京セルバンテス文化センター(東京)
Year and Date
20131001-20131003
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