2012 Fiscal Year Research-status Report
ノンネイティブ母親の言語行動:在日タイ人母親の日本語談話分析
Project/Area Number |
24720188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
中村 ジェニス 国際基督教大学, 付置研究所, 研究員 (10622136)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 非母国語 / 母親言語行動 / タイ人 / 在日外国人 / 幼児語 / 多言語 / ラベルリングに対するフィードバック / 言語ミキシング |
Research Abstract |
本研究の目的は子供に日本語のみで話しかける方針をとったタイ・英・日本語の多言語話者のタイ人母親(SRI)のデータを元に、非母語話者の母親の言語行動の特徴を明らかにすることである。具体的にはSRIの日本語以外の使用(タイ語と英語)と日本語の幼児語の使用割合と、子供のラベリングに対する母親からのフィードバックを調べる。1歳2か月から2歳6か月まで17か月にわたって収集したデータを分析した結果、母親の92.5% の発話は日本語、7.5%は他の言語であり、実際の言語使用は方針と異なることが分かった。他言語の中では、タイ語の使用頻度が最も高かった。また、日本語の幼児語使用に関しては、日本人の母親がよく使用するオノマトペより、接辞(例:キリンさん)を好むことが分かった。子供のラベリングに対する母親のフィードバックも日本人の母親と異なり、指示的なフィードバック(instructive feedback) と修正的なフィードバック (corrective feedback) が多く、対人フィードバック(interpersonal feedback) は少ない。この結果、多言語を話す母親は、非母語を選んで子供に話しかける方針をとっていても、母語者と異なり、多様な言語環境を子供に提供していることが明らかになった。厚生労働省の統計によれば、2009年の結婚件数のうち、4.9%は国際結婚である。そのうち、日本人男性と外国人女性の間の結婚は77.8%を占めており、女性の国籍で多いのはアジア圏である。本研究は、今まであまり注目されていなかった非母語話者の母親の言語行動に関心を寄せたものである。現在、日本だけではなく韓国、台湾やシンガポールなどでも外国人の母親が増えている中、本研究は国際結婚における家庭の使用言語についての指針となりうるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
データは17ヶ月以上にわたり収集した毎月のビデオデータ解析がすでに完了した。 データトランスクリプション、コーディングおよび確認作業も研究助手の多大な協力を得て無事に終了している。 研究成果としてすでに2つの学会で発表を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのデータとの比較対象として、当初予定になかった日本人の母親による子どもとの発話データを収集・解析する。 また、シンガポールのバイリンガリズムに関するシンポジウムにおいて、研究成果を発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度の残額は、当初予定になかった日本人の母親と子どもの間の発話データ解析作業に使用する予定である。
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