2012 Fiscal Year Research-status Report
中国語前置詞フレーズを巡る語順問題に関する体系的研究
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24720191
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
平山 邦彦 拓殖大学, 外国語学部, 准教授 (30384704)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中国語 / 現代中国語文法 / 前置詞 / 前置詞フレーズ / 語順 / “比”構文 |
Research Abstract |
本年度は、当初の予定通り「中国語の領属関係を表す“比”構文(①“X的N比YW”、②“XN比YW”、③“X比YNW”〔※それぞれ日本語訳すると「XのNはYよりW」「XはNがYよりW」「XはYよりNがW」〕となる)におけるX/YとNを巡る語順問題」に焦点を当てて研究を進めた。また、研究実績としては大きく分けて次の3点となる。 (1)上に挙げた3種類の“比”構文(“X的N比YW”〔例.他的年紀比我大〕、“XN比YW”〔例.他年紀比我大〕、“X比YNW”〔例.他比我年紀大〕)の成立の為の必要条件はいかなる点にあるか:この点に関しては、結果として成立グループには一定の法則性(X/YとNの間に顕現される顕著性と「全体-部分」関係)のある事が確認された。 (2)②“X比YNW”〔例.他比我年紀大〕タイプの“比”構文と対応する「XはYよりNがW」〔例.彼は私より年齢が上だ〕タイプの日本語比較文の成立状況における成立条件:中国語②タイプの“比”構文と類似形式の日本語の「XはYよりNがW」との間に成立、不成立の状況についてかなりの類似点のあることが発見された。この場合も、X/YとNの間における顕著性と「全体-部分」関係が鍵となることを確認した。 (3)①②③の“比”構文について、その使用頻度や選択制限等はどうなっているのか。また、この部分から中国語のいかなる文法的特徴を見出すことができるか:この点について、中国語ではNの位置が“比Y”より前に置かれる①②タイプの方が、“比Y”より後ろに置かれる③タイプより割合として多いことが確認された。要因としては、次の3点の作用していることが発見された。(ア)類型論的語順原則(イ)中国語名詞に含まれるデフォルト性(ウ)中国語“的”構造の機能。 以上(1)(2)(3)は何れも口頭発表を行なった内容である。今後更に修正を加えて、論文として発表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、当初の予定通り「中国語の領属関係を表す“比”構文(①“X的N比YW”、②“XN比YW”、③“X比YNW”〔※それぞれ日本語訳すると「XのNはYよりW」「XはNがYよりW」「XはYよりNがW」〕となる)におけるX/YとNを巡る語順問題」に焦点を当てて研究を進めている。具体的には「研究計画」で示す通り、「3種語順の“比”構文について、成立条件、選択状況等を調査し、そこに対し言語学的分析を加える」というコンセプトのもと研究を進めた。その結果、「成立条件」「選択状況」双方に対して、ある程度の成果が挙げられつつ状況にある。 まずは「成立条件」に関する分析であるが、上の「研究実績の概要」で示した通り、①②③3種類の“比”構文について成立と不成立の状況において、大筋一致した現象が見られた。この点に関して、X/YとNにおける顕著性と「全体-部分」関係が作用していることを解明した。 次に「選択状況」という点についても、上の「研究実績の概要」で示した通り一定の傾向性を発見し、その要因として、(ア)類型論から見た語順原則(イ)中国語名詞に含まれるデフォルト性(ウ)中国語“的”構造の機能という点が作用していることが発見された。 上に報告するように、平成24年度は概ね予定通りの内容をこなすことはできたと思われるが、当初の予定に掲げた「日本語比較文との対照」についてコーパスデータの収集に十分な時間を充てることができなかったことが、少し舌足らずなところである(この部分については「研究計画」に示した「研究が思うように進まなかった時の対策」に示した通り、中国語コーパスの収集に力を入れている)。また、“比”構文に関しても当初想定した以上に考察すべき問題が発見され、そこに時間を割くという若干想定外な部分があった。但しこの点は本研究課題を更に実りあるものとする為に大きく貢献を成すものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については次の2つの方向から進める予定である。 (一)「研究実績の概要」及び「現在までの達成度」で挙げた①②③3種類の“比”構文について考察を進める中で、まだ完全に解明されていない、或いは連動的に発見された課題点が幾つか存在した。具体的には、次の2点となる。(1)平成24年度は主に3種語順の“比”構文に見られる共通性について研究したが、3種語順の“比”構文に見られる個別の特徴はいかなるものか。その部分から、中国語全体像に通じる特徴を見出すことができるか。(2)3種語順の“比”構文に解明された内容が、他の文法現象を解明する一助となるか(具体的には主述述語文との関連性について考えているところである)。 (二)申請当初予定していた通り、他の前置詞フレーズについて視野を広げて研究を進めていく。具体的には、次の通りになる。(1)中国語前置詞フレーズ(前置詞+名詞性語句)の位置問題:中国語の前置詞フレーズの語順に関しては、「主語+前置詞+名詞性語句+動詞/形容詞」という基本語順となる(例.我対歴史不感興趣。[私は歴史に興味がない])。それに対し「前置詞+名詞性語句+主語+動詞/形容詞」という語順(例.対歴史,我不感興趣。[歴史に私は興味がない])が可能となるもの、不可能となる場合も存在している。このような語順の成立や不成立には、如何なる原則が作用しているのか。(2)前置詞フレーズ連用に関する許容度と選択の傾向性、それに対する認知的要因:中国語の文で前置詞が連用されるパターン(例.我以前在這儿跟他見過面。[私はここで彼と会ったことがある])の見られることがあるが、この部分についてはどのような法則が作用しているか。 (一)(二)何れの点に関しても、当初の研究計画の通り中国語の大量コーパスの収集と分析、日本語コーパスとの対照、更にはその現象に対し言語学的な分析を加えていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用については以下のような計画をしている。 (1)物品費:大まかな内訳としては次の3点について考えている。①文献の収集:方向性としては、特に中国語文法研究、言語学理論、そして前置詞関連の先行研究を収集していく予定である。またその収集範囲は日本国内に留まらず、中国大陸、更にはアメリカと幅広く視野に入れるつもりである。②ノートパソコン:今年度も海外を含め出張の機会の出てくることが予想される。更には、外で作業をする上での効率性を図る上での必要性からも、購入を考えている。③論文の抜き刷り:論文として成果発表をする際必要となることが予想されるので、予算として計上している。 (2)旅費:次年度も、海外への学会出張、そして文献収集を計画している。学会に関しては中国大陸、若しくはその他の国で開催される国際学会を念頭に入れている。文献収集に関しては、中国大陸、更にはアメリカ合衆国に範囲を広げて中国語及び言語学関連の文献を数多く収集しくことを計画している。 (3)人件費:この部分については、大まかに次の点を視野に入れている。①中国語話者による例文のインフォーマントチェック。②海外発表や雑誌発表用の論文を中国語で執筆した際の添削依頼。③ネット小説等のテキストデータ加工。④コーパスデータからの例文収集(次年度は、特に当初からの予定通り前置詞フレーズが文頭に置かれるタイプを調査する予定である。その該当例を中心に収集してもらう)。⑤資料整理。⑥電子書籍化補助業務。 (4)その他:この部分は、主に次の項目を念頭に入れている。①郵送費。主に海外に行った際、現地からの郵送に費やすことを想定している。②印刷費。主に国内外の図書館等に行った際の文献コピーを想定している。③通信費。出張時の電話代等。④スキャン業者委託代。次年度は大量の書籍電子化を考えている。それに際し、一部を業者委託したいと考えている。
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Research Products
(3 results)