2013 Fiscal Year Research-status Report
中国語前置詞フレーズを巡る語順問題に関する体系的研究
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24720191
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
平山 邦彦 拓殖大学, 外国語学部, 准教授 (30384704)
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Keywords | 中国語 / 現代中国語文法 / 前置詞フレーズ / “比”構文 / 語順 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度の研究課題であった「中国語の領属関係を表す“比”構文(①“X的N比YW”、②“XN比YW”、③“X比YNW”〔※それぞれ日本語訳すると「XのNはYよりW」「XはNがYよりW」「XはYよりNがW」〕となる)におけるX/YとNを巡る語順問題」に更に踏み込み、各種“比”比較文でどのような個別性が見出されるかという点に様々な角度(各語順形式間における対照比較、他文法現象との比較、日中比較文の対象等)から分析を加えた。研究実績としては大きく分けて次の3点となる。 (1)上に挙げた3種類の“比”構文(“X的N比YW”〔例.他的年紀比我大〕、“XN比YW”〔例.他年紀比我大〕、“X比YNW”〔例.他比我年紀大〕)の成立の為の必要条件はいかなる点にあるか:この点に関しては、結果として成立グループには一定の法則性(X/YとNの間に顕現される顕著性と「全体-部分」関係)のある事が確認された。(成果は既に論文として発表) (2)③“X比YNW”〔例.他比我年紀大〕タイプの“比”構文に焦点を絞り、主述述語文“XNW”〔例.他年紀大(彼は年齢が高い)〕の成立度を分析した。その結果許容度に類似点のあることが発見された。即ち、この種の比較文成立に関して主述述語文の成立条件(X/YとNの間に顕現される顕著性と「全体-部分」関係)が大きく作用していることが確認された。(成果は既に論文として発表) (3)③語順の比較文を焦点に絞り、このタイプの“比”構文の成立条件や②比較文との分布状況の違い、そして日本語比較文「XはYよりNがW」(例.彼は私より年齢が高い)との比較を通して、そこから見出させる諸要則を分析して次の点が主要素となっていることが確認された。(ア)顕著性と「全体-部分」関係(イ)名詞成分Nと“比Y”から見出される限定性の強弱(ウ)類型論的語順原則(成果は学会発表済み。今後論文にて発表予定)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は予定通り「中国語の領属関係を表す“比”構文(①“X的N比YW”、②“XN比YW”、③“X比YNW”〔※それぞれ日本語訳すると「XのNはYよりW」「XはNがYよりW」「XはYよりNがW」〕となる)を巡る諸法則について、①②③全般に当てはまる法則について解明を行なった。その中で、個々の形式に特徴的個別性がどの点にあるのかを解明していくことで今後の研究課題を遂行する上で大きな一助になることが強く感じられた。よって、当初の予定を変更し、引き続き“比”構文を主な対象として研究を行うこととした。その結果、変更に見合うだけの結果を得ることができたように思われる。 上で示した個別性に関して述べると、具体的には③を中心として考察を進めていった。その結果としては、次の通りになる(1)まずは、③に関して、その成立条件が「顕著性」と「全体-部分」関係にあることを言及していったが、その認定度は中国語主述述語文“XNW”〔例.他年紀大(彼は年齢が高い)〕と共通性のあることが発見された。即ち、この語順タイプの比較文には主述述語文の成立要素が大きな割合で直結していることが確認された。(2)③語順の“比”比較文について、他形式“比”比較文②との対照、コーパスにおける分布状況、類似形式の日本語比較文「XはYよりNがW」(例.彼は私より年齢が高い)との比較等の要素を加えて、そこに内在する諸要因について考察を進めていった。その結果、次の結論が得られた:(ア)名詞成分Nと“比Y”から見出される限定性の強弱。デフォルト値としては名詞Nの限定性の方が“比Y”より高いが、その強度に逆転が起こった場合③形式の選択可能性が上昇する。(イ)左に示した現象は“可別度領前原則”の作用によるものである。 以上の考察を通して中国語“比”比較文の語順表現に作用する中国語話者の認知原則及び言語類型論的規則について解明を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は他の前置詞フレーズについて視野を広げて研究を進めていく。具体的には、次の通りになる。 (1)中国語前置詞フレーズ(前置詞+名詞性語句)の位置問題:中国語の前置詞フレーズの語順に関しては、①「主語+前置詞+名詞性語句+動詞/形容詞」という基本語順となる(例.南京的夏天比北京的夏天熱[南京の夏は北京の夏より暑い/*比北京的夏天南京的夏天熱])。それに対し②「前置詞+名詞性語句+主語+動詞/形容詞」という語順(例. 我対歴史不感興趣[私は歴史に興味がない]。/対歴史,我不感興趣。[歴史に私は興味がない])も可能となるものが存在している。更には、②の語順しか許容しないものも存在している(例.*我関于国際形勢了解得不多/関于国際形勢,我了解得不多[国際情勢に関して、私はそんなに理解していません])。このような語順の成立や不成立には、如何なる原則が作用しているのか。 (2)前置詞フレーズ連用に関する許容度と選択の傾向性、それに対する認知的要因:中国語の文で前置詞が連用されるパターン(例.我以前在這儿跟他見過面。[私はここで彼と会ったことがある]/我以前跟他在這儿見過面。[私は以前彼とここで会ったことがある])の見られることがあるが、この部分についてはどのような法則が作用しているか。 (一)(二)何も、当初の研究計画の通り中国語の大量コーパスの収集と分析、日本語コーパスとの対照、更にはその現象に対し言語学的な分析を加えてくつもりである。 尚進度としては、(1)(2)双方の研究を終了させることを目標としているが、“比”構文の状況同様、掘り下げるべき問題が現れる可能性が十分に存在する。その場合は、雑な考察となるのは避けるべく、無理に両方を終わらせるより一つ一つ着実にこなすことに優先順位を置いていきたい。具体的には(1)の問題をしっかりと解明した上で、(2)の課題へと移行していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の使用金額に差額が生じた理由としては、次の通りである。 まずは、超過金額については、次の通りになる。(1)物品費についは、研究遂行上ノートパソコンを購入した。これにより、予定額を大幅に上回ることとなった。(2)旅費についても、前年度予定していたアメリカへの文献収集を今年度行った。よって、その分航空券、ホテル代等前年度より多くの支出が生じることとなった。(3)その他費用に関しては、主に書籍の電子化に予定より多くの金額を費やすこととなった。それにより、文献を電子化しパソコン等で持ち運びいつでも閲覧するこことで研究の合理性を図れるようにした。また、謝金については当初の予定より支出額の下回った項目となる。理由は以下の通りである。(1)究遂行の優先順位を加味した結果、謝金の生じる作業が発生しなかった。 以上、超過項目の金額と剰余項目の金額を相殺した結果上の残高が生じることとなった。 (1)旅費:次年度も、海外への学会出張、そして文献収集を計画している。学会に関しては中国大陸、若しくはその他の国で開催される国際学会を念頭に入れている。文献収集には、中国大陸、更にはアメリカ合衆国に範囲を広げて中国語及び言語学関連の文 献を数多く収集する予定である。また予算の都合上、大部分はこの項目に費やされることが予想される。(2)以下は、旅費の支出との兼ね合いから調整していくことになる。 (2)物品費:①文献の収集。②論文の抜き刷り:論文として成果発表をする際必要となることが予想されるので、予算として計上している。(3)人件費:①中国語話者による例文のインフォーマントチェック。②海外発表や雑誌発表用の論文を中国語で執筆した際の添削依頼。③コーパスデータからの例文収集。⑤資料整理(4)その他:この部分は、主に次の項目を念頭に入れている。①郵送費。②印刷費。③通信費。④スキャン業者委託代。
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Research Products
(3 results)