2013 Fiscal Year Research-status Report
言語獲得と言語使用―日本語動詞に関する心理言語学実験
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24720192
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岡部 玲子 日本大学, 法学部, 准教授 (60512358)
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Keywords | 心理言語学 / 言語獲得 |
Research Abstract |
本研究の目的は大きく2つに分けられる。1つ目は、子どもの言語獲得に関する先行研究で獲得が難しいと報告されてきた動詞を含む様々な構文について、その獲得を難しくしている内的・外的要因を解明することを目指し、子どもを被験者とする行動実験を実施することで、その要因を絞り込むことである。2つ目は、子どもの言語理解と大人のそれを比較することである。 本年度はまず、1つ目の研究課題について前年度に実施した実験結果をまとめ、ドイツで開催された国際学会Generative Approaches to Language Acquisiiton (GALA2013) で口頭発表した。研究の対象としたのは、日本語の「受動文」(「花子が太郎に叩かれた」など、受動の「られ」を含む構文)である。これまでの獲得研究において、受動文は5才児でも理解が難しいと報告されてきたが、受動文が使用される状況が自然であるように操作した場合(主語名詞句で表される者が被害を受けていることを強調する句を挿入する)には、4才児でも大人と同じように理解することが可能であることを示したものである。この学会で受けた意見やコメントなどを踏まえた上で、論文を執筆・提出し、現在印刷中である。 また、日本語に特徴的な動詞複合語(V-V compound)を含む文の獲得を解明する実験研究を開始した。実験の準備が整い、予備実験を開始したところである。 さらに、前年度までに取り組んできた日本語の「かき混ぜ文」(「花子を太郎が押した」など、語順が入れ替わった文)の獲得に関する実験研究をまとめ、共著論文としてJournal of Psycholinguistic Researchに提出し、現在審査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本語「受動文」に関する実験研究に関しては、予定していた被験者(子ども)の人数を増やして本実験を行い、その実験結果を発表することができたが、25年度に準備を開始した「動詞複合語」の実験研究については、当初2月に予定していた保育園での実験実施が、保育園の都合により延期されたことにより、本実験の実施が夏以降になる可能性が出てきてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、前年度の終盤で開始した「動詞複合語」の実験研究を軌道に乗せることから始める。5月中に予備実験を開始し、国際学会(9th International Workshop on Theoretical East Asian Linguistics (TEAL-9) 或いは Boston University Conference on Language Development (BUCLD))での発表を目指す。 さらに、大人を対象としたERP実験の実施可能性を探る。子どもにとって獲得が難しい構文を大人がどのようにオンライン処理しているのかを解明することを目指すものであるが、特殊な実験設備が必要であることから、実験実施の交渉から始めることになる。
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