2014 Fiscal Year Annual Research Report
言語獲得と言語使用―日本語動詞に関する心理言語学実験
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24720192
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岡部 玲子 日本大学, 法学部, 准教授 (60512358)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心理言語学 / 言語獲得 / 動詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、子どもの言語獲得に関する先行研究で獲得が難しいと報告されてきた動詞を含む多様な構文について、その獲得を難しくしている内的・外的要因を明らかにすることを目指し、4~6歳児を対象とした行動実験を実施し、その要因を絞り込むことであった。また、外的言語刺激(大人からの言葉の働きかけ)のみからは、その獲得過程および獲得の達成が説明できないような言語現象に関して、なぜそれが可能であるのか、どのような言語機能・言語能力が関与しているのか、についても明らかにすることを試みたものである。 最終年度である本年度の実績は大きく2つある。まず、1年目から取り組んできた日本語の「かき混ぜ文」(「花子を太郎が押した」など、基本語順と照らして項が入れ替わっている文)の獲得に関する実験の結果を考察し執筆(共同)した論文が、Journal of Psycholinguistic Researchにまずオンライン版として公刊された。2つ目は、昨年度から開始した日本語の動詞複合語(V-V compound)の獲得研究を発展させたことである。先行研究で「語彙的複合語」と分類される複合語(「押し倒す」「投げ入れる」など)について、類似する「V-てV構文(「押して倒す」「投げて入れる」など)との意味的・統語的特徴を比較しつつ、その獲得について実証データに基づき考察した。発話データで観察される複合語は非常に限定的であるにもかかわらず、4歳児でもすでにその意味的・統語的相違を理解していることが明らかになった。この実験研究をThe 9th Theoretical East Asian Linguistics (TEAL9)において口頭発表(共同)を行った。また、これに関連し、「統語的複合語」についても同様の実験研究を行い、その結果をまとめたものを国際学会における口頭発表に応募中である。
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