2012 Fiscal Year Research-status Report
文法的依存関係とその統合処理の認知神経心理学的研究:文法性の錯覚現象を手がかりに
Project/Area Number |
24720195
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
小野 創 近畿大学, 理工学部, 准教授 (90510561)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本語 / 文処理 / 文法的依存関係 / Wh疑問文 / 自己ペース読文課題 / 心理言語学 / 干渉効果 / アスペクト |
Research Abstract |
本年度は,依存関係をキーワードにいくつか異なるパラダイムで実験を実施し,一部を論文としてまとめることが出来た(審査中)。また,実時間上で行われる処理を今後研究するにあたり,今年度はオフラインの実験を実施し,実験刺激の適格性や効果の変化について調査した。来年度はその結果を学会等で発表しつつ,さらに実験刺激の改善について検討を進める予定である。 以下に今年度の成果について概要を述べる。(1)日本語の項と述語の統合操作について,干渉効果を測定することで項の記憶に対する符号化と読み出しがどの様な素性に基づいて行われているかを調べた。動詞の下位範疇化素性の役割が構造の予測とともに重要であることが明らかになった。今後,刺激文をやや改変した上で追試を実施する予定である。この研究は,これまで日本語ではほとんど実施されてこなかった種類の研究であり,日本語のような主要部後置型言語において,項と述語の依存関係が文解析器によってどのように統合されているのかを明らかにするために非常に大きな貢献であると言える。(2)動詞と副詞の間に見られる意味的・文法的依存関係の1つであるアスペクト情報の処理について第二言語習得の観点から調査した。特に日本語の学習者がアスペクト情報の文法的な明示の仕方について類型論的に異なる母語(中国語)の話者であった場合に,学習者がどのような理解をしているのかをオフラインとオンラインの実験を組み合わせて調べた。アスペクトの強制という現象の理解に際して,上級学習者が母語話者とは異なる解釈をすることが明らかになり,動詞の語彙情報の中でもアスペクト情報の習得が困難であることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在,最終的な目的である事象関連電位を指標とした実験を実施し,先行研究と比較することで文法的依存関係がどのように構築されているのかを明らかにするという目標に向けて準備を進めている。今年度は,行動実験を実施し,刺激文の改善にもつなげることが出来るので,来年度の行動実験と脳波計測実験にむけて順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の自己ペース読文課題を用いた実験をすることで,丁寧にパラダイムの選定を行うことが重要だと考えられる。刺激文の品質を上げるとともに,どの様な場合に錯覚現象が見られるのか(また見られないのか)を調査し,脳波計測の結果の解釈がより容易になることを目指す。また,先行研究との違いを明確にするために,引き続き文献調査を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
事象関連電位を用いた実験を確実に実施するために,他大学の研究室の脳波計設置状況等について情報を収集する必要がある。そのための旅費が必要である。また,多くの行動実験も同時に実施することが望まれるので,そのための人件費と謝金を使用する計画である。脳波計測に際して,刺激呈示用のパソコンを更新する必要があるので,物品費を用いる計画である。
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Research Products
(7 results)