2014 Fiscal Year Annual Research Report
文法的依存関係とその統合処理の認知神経心理学的研究:文法性の錯覚現象を手がかりに
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24720195
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
小野 創 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (90510561)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 文処理 / 文法的依存関係 / 距離の効果 / 作業記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は本研究課題における最終年度であったため、これまで実施した研究成果を統合することを第一の目標として研究を進めた。昨年度実施した実験結果をもとに再度実験で使用された刺激文の中身を精査しつつ、今後の新たな研究課題につながる課題の発掘を目指した。以下に今年度の成果についての概要を述べる。 (1)小野・小畑・中谷 (2014):本研究では、人間の文処理システムと記憶システムの関係を明らかにしようとしたものである。先行研究において、文を処理する際に記憶システムが同時に処理することのできる要素の数は非常に制限されているとする主張がある。この主張をもとに、文解析器が文法的依存関係を構築する方略が記憶システムに様々な阻害効果を引き起こすことについて議論した。日本語のWh句と数量詞が阻害効果を引き起こすという実験結果を報告し、Wh句と数量詞が記憶システムの中で共に一般量化詞として扱われるということが主張された。 (2)Ono & Nakatani (2014):距離の効果は作業記憶に対する文処理上の負荷であると考えられているが、多くは英語などの主要部前置型言語における研究であり、主要部後置型言語では距離の効果が観察されないことが多い。Wh疑問文をもちいた2つの自己ペース読文課題を実施し、Wh句と動詞の間に距離の効果を観察した。この効果は、時間的要因よりも類似性などを基盤とした阻害効果の関与が強く行われる。 (3)久保・小野・田中・小泉・酒井 (2014):文処理研究において、目的語が主語に先行する語順(OS語順)は目的語の処理が主語の処理に先行することによって産出されると主張されてきた。VOS語順を代表的な語順の1つであるカクチケル語(マヤ諸語)を対象に文産出実験を実施し、この言語では主語が処理された後で文末まで要素の保持がなされるという文産出課程を経ていると主張された。
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Research Products
(11 results)