2012 Fiscal Year Research-status Report
通訳ノートにおける発話理解の認知語用論的研究と実証
Project/Area Number |
24720197
|
Research Institution | Nagasaki University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
南津 佳広 長崎外国語大学, 外国語学部, 講師 (70616292)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 逐次通訳 / 通訳ノート / 認知語用論 / 発話理解 / メタ表象 / 動機付け |
Research Abstract |
平成24年度は、本研究の課題である、通訳者が安定的に逐次通訳を行えるように逐次通訳ノート(通訳メモ)とるにはどのような能力に支えられているのかについて、理論的な基盤を確立すべく、認知語用論・認知心理学・発話理解・発達心理学などの先行研究の文献を購入したり論文を入手して、理論化の整備をすすめた。 先行研究をもとに現段階で立てられた仮説は、「通訳者は発話理解の発達過程で形成された共同注意能力を基盤に、原発言者の発話を聞き取る際に、言語化された発話を手がかりに、推論を働かせて、原発言者の伝達意図を命題単位で概念化している」ということである。そして、安定的に逐次通訳を行えるかどうかは、概念化された命題単位の伝達意図をメタ表象する能力が必要不可欠である可能性が高いことがわかった。 これは、平成24年度に行った、現役の逐次通訳者と逐次通訳の授業を受講している学生の通訳ノートを比較した予備調査からも裏付けられた。この予備調査では、既存の逐次通訳ノートに関する研究から打ち出されている、「①最小の労力で構造的にメモをし、②最大限復元できるようにする」という原則を学生にも教えた。そこで、同一の素材を使って、現役の通訳者と逐次通訳を受講している学生の通訳ノートを比較した。その結果、原則①は双方ともできていても、原則②に顕著な差が出た。このことから、逐次通訳ノートを参照することで、人間の発話理解をオンラインで可視化できるという研究の目的に近づくことができたといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れている理由は下記の3点である (1)調査を行う逐次通訳の英語版・日本語版の原発言(スピーチ)の作成 (2)調査を行う参加者(現役の通訳者)の確保 (3)ドイツ・ロシアで刊行された逐次通訳に関する研究の入手の遅れ
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究の推進方策は下記の5点である (1)平成25年7月までに、調査に用いる逐次通訳の英語版・日本語版の原発言(スピーチ)を完成させる (2)平成25年8月・9月に通訳者派遣エージェントに依頼をかけ、現役の会議通訳者(A・Bクラス)に逐次通訳を行ってもらう (3)先行研究から立てた仮説と予備調査の結果を国内外の学会で発表を行うべく応募を行っている (4)調査結果を踏まえた結果を、国内外の学会で発表し、論文として投稿する (5)科研の成果を報告書としてまとめる
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の使用計画は下記の通りである (1)物品費:まだ集められていない先行研究(ドイツ・ロシアなど)の収集やボイスレコーダーの購入、ビデオカメラ用のメモリーカードの購入、作業協力者用のノートパソコンの購入、報告書の作成費用に当てる予定である (2)人件費:調査に用いる英語版原発言(スピーチ)のネイティブチェック費用や調査用の英語版・日本語版の原発言(スピーチ)の音声の吹き込み費用、調査に参加してもらう現役通訳者への謝礼、逐次通訳のノートテーキングを行っているビデオと逐次通訳の訳出音声データの編集作業の依頼、海外の学会誌に投稿する際の英語ネイティブチェック費用に当てる予定である (3)旅費:本務校との兼ね合いにもよるが、国内外の通訳翻訳・応用言語学・語用論の学会に参加し、最新の動向に関する情報収集や学会発表を行うため、前年度の繰越金も含め旅費などに当てる予定である
|
Research Products
(4 results)