2013 Fiscal Year Annual Research Report
通訳ノートにおける発話理解の認知語用論的研究と実証
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24720197
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Research Institution | Nagasaki University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
南津 佳広 長崎外国語大学, 外国語学部, 准教授 (70616292)
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Keywords | 通訳学 / 翻訳学 / 認知語用論 / 語用論操作 / 飽和 / 自由拡張 |
Research Abstract |
本研究では、逐次通訳におけるノート・テーキング(通訳ノート)に焦点を当て、認知語用論の枠組みを参照し、通訳ノートの理論的な枠組みを構築すべく、研究を行った。 平成24年度は主に逐次通訳関するイギリス、フランス、ドイツ、ロシアで刊行された文献や、関連する言語処理や意味論、語用論、言語哲学などの文献をあたり、先行研究の精査を行った。その上で、通訳ノートの理論を構築するにあたり、欠けている要素と、必要となる要素は何かを考察し、逐次通訳実験を行うための方法を構築した。 平成25年度は、実務経験10年以上のプロの会議通訳者9名に依頼して逐次通訳の実験を行い、実際のノートテーキングを録音・録画し、訳出を元に内省を行ってもらった。 そこで、通訳ノートの(a)表記方法、(b)表記内容、(c)表記と訳出とのズレの3つの点から分析を進めた。(a)と(b)には法則性はないのか、(c)では「安定的」と評価される通訳が出きるのはなぜかを探るべく、データを構築し、分析をすすめた。 その結果、標記内容に関しては、原発言の最小命題を構成する意味論レベルの語彙概念の断片を、略語・記号等を用いていることがわかった。また、表記方法に関しては、原発言を構成する最小命題のユニットを作り上げ、論理的に整合性が取れるように表記していることが明らかとなった。訳出局面では、通訳者は通訳ノートの表記内容を手がかりに、語用論操作を行っていることがわかった。このことから、発話の理解、産出はモジュールごとに行われていることが明らかとなった。ノート・テーキングは意味論モジュールにて処理された概念表示を反映しており、訳出は語用論モジュールで行われた操作をへて行われていることが明らかとなった。 この実験で得られた成果を、平成25年10月、11月に韓国で行われた国際会議と日本メディア英語学会にて発表し、現在論文にまとめている。
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Research Products
(2 results)