2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720209
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
岸本 恵実 京都府立大学, 文学部, 准教授 (50324877)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国語学 / 羅葡日辞書 / 日葡辞書 / 翻訳 / 位相 |
Research Abstract |
キリシタン版『羅葡日辞書』を他の辞書と比較することにより、以下1~4を明らかにした。 1、『羅葡日辞書』の方言語彙 『羅葡日』の日本語には、『日葡辞書』においてXimo(九州)方言注記がされている語・『日葡辞書』に方言注記がないが九州方言語彙と思われる語が合計約30語含まれている。辞書全体を通じ類義語の中央語と混用されているものの、後半では少なくなっている。 2、『羅葡日辞書』における西欧古代神話に関する訳語 羅葡日辞書の日本語訳では、原典のラテン語辞書に含まれる西欧古代の神々を「仏神」「仏」を用いて訳したほか、神話における冥界を仏教語を用いて「地獄」と訳し、古代神話も仏教の世界もキリシタンにとって異教の概念であることを明示している。 3、ラテン語学習辞書としての『羅葡日辞書』とバレト『葡羅辞書』の比較 羅葡日辞書はラテン語学習者・日本語学習者の両方を対象としており、ラテン語の意味や語形変化を知るには役に立つが、原典の豊富な用例を省いているため書くための辞書としては不十分である。ヨーロッパでもポルトガル人にとってこの目的での良い辞書はなかったので、バレトは日本で他の資料をも駆使して『葡羅辞書』を編纂した。 4、16-17世紀の日本におけるポルトガル語辞書 『羅葡日辞書』と同時期、日本語・ポルトガル語を含む辞書としては他に『日葡辞書』と、写本の『葡日辞書』および『南詞集解』が現存する。当時の日本でポルトガル語習得が必要だったのはキリシタンと商人であり、実用的かつ会話重視である点は共通するが、あくまでもラテン語に準ずる媒介語としての位置づけだったキリシタンの場合と異なり、商人はポルトガル語のみを運用する必要があった。このような方向性の違いが四辞書の内容に反映している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『羅葡日辞書』日本語訳の位相のうち、方言・卑語の使用の実態をほぼ明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
成果の発信方法としてウェブの使用が十分ではないので、日本語・英語での個人サイト作成を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)