2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720209
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
岸本 恵実 京都府立大学, 文学部, 准教授 (50324877)
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Keywords | 日本語史 / ポルトガル語 / 南蛮通事 / 羅葡日辞書 / 日葡辞書 |
Research Abstract |
平成25年度は、おもに以下1・2を明らかにした。 1.キリシタン時代のポルトガル語辞書について キリシタン時代の現存するまとまった辞書のうち、ポルトガル語を含むのは『羅葡日辞書』『日葡辞書』のキリシタン版2点と、『葡日辞書』『南詞集解』の転写本2点であるが、これらは目的と性格が大きく異なる。前者2点はイエズス会におけるポルトガル人宣教師の日本語学習および日本人会士のポルトガル語学習のため、他のキリシタン版とは異なり例外的にポルトガル語が用いられたと考えられるものである。後者2点は、著者も成立事情も不明であるが、日本人南蛮通事のポルトガル語習得のために作成されたと推測される。2点ともキリシタンの教義に関わる用語は見られないが、南蛮貿易と宣教活動とは不可分の関係であったから、キリシタンと全く無縁な人々の手により成立したとは考えにくい。 2.羅葡日辞書の内臓に関する訳語について 『羅葡日辞書』と『日葡辞書』とでは、ラテン語・ポルトガル語と日本語との訳語の対応が一致しない例が少なくない。また、同じ辞書内でも、訳語の不統一が見られる場合もある。元来ヨーロッパ解剖学の用語とは大きく異なる概念であった日本語の「脾臓」「腎臓」「肝臓」は、『羅葡日』『日葡』ではどのようなラテン語・ポルトガル語の単語と対応させているかでゆれが見られたが、遅くとも江戸時代半ばには現代と同じ対応関係に落ち着いた。「南蛮」の語も、『羅葡日』『日葡』で Europa を指したり India を指したりと、用法のゆれが認められる。これらの訳語のゆれは、イエズス会における日本語研究の進展と、それに伴う訳語の変化・定着の様相を示すものとみられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『羅葡日辞書』単体では見えてこない語彙の位相のうち、特に方言については『日葡辞書』と比較することではほぼ明らかにしたが、その他専門用語についても、『日葡辞書』だけでなく南蛮通事用辞書『南詞集解』を加えて比較することにより明らかにしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は最終年度にあたるため、研究対象を『羅葡日辞書』と『日葡辞書』の語彙的位相の違いに絞り、『日葡辞書』の特殊語注記をもとに『羅葡日辞書』の調査を進め、研究課題のまとめとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入希望の文具が品切であった為。 代替の文具を購入予定。
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Research Products
(6 results)
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[Book] Missionary Linguistics V: Translation theories and practices2014
Author(s)
Zimmerman, Klaus, Zwartjes, OttoZimmerman, Klaus, Zwartjes, Otto, Schrader-Kniffki, Martina, Kishimoto, Emi
Total Pages
358(251-272)
Publisher
John Benjamins
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