2012 Fiscal Year Research-status Report
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24720212
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
櫛引 祐希子 追手門学院大学, 国際教養学部, 講師 (10609233)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本 |
Research Abstract |
平成24年度の研究実績としては、東北地方の6県(青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県)での指小辞「コ」に関するアンケート調査を実施したことが挙げられる。これは研究実施計画でも平成24年度に予定していた調査である。 このアンケート調査は、東北方言の指小辞「コ」の意味的・文法的な地域差を明らかにする目的でおこなった。東北地方の238地点に協力を求め、男女を問わず50代以上の地元出身者に回答いただいた。回収できた200程度の回答結果について、現在分析している段階である。 東日本大震災の被災地にも協力を求めることに当初は躊躇したが、結果を見る限り被災地と非被災地の回収率に大きな違いはない。むしろ、大津波の被害を受けた沿岸部や福島の原発事故で避難を余儀なくされている地域では、好意的に方言調査に協力する様子が回収したアンケート調査票や同封されていた手紙・資料等からうかがえた。この事実は、地域に密着した方言という言語を対象にしていく方言研究者として、指小辞の調査にとどまらず注目しておきたい点である。 東北6県における指小辞「コ」の意味的・文法的な地域差をめぐる問題は、今年度中に研究成果として発表する予定だが、分析段階で気づいた点が二つある。一つは<対象の小ささ>という指小辞の中核的な意味は東北6県の地域間で共通して見られるという点、もう一つは<程度の低さ>とか<量の少なさ>といった指小辞の意味には地域差や個人差が見られるという点である。この結果は、語の周辺的な意味に地域差が生まれやすいという問題を考える上で非常に興味深い。また、東北における指小辞「コ」の歴史的な変化を反映しているとも考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年9月の社会言語科学会のワークショップで発表することになり、平成24年の夏休みに予定していた沖縄県の指小辞「グヮ」に関する調査の実施が難しくなった。 沖縄県の指小辞「グヮ」は「子等」をルーツにすると考えられており、「子」をルーツにする東北方言の指小辞「コ」の歴史を考えるには対照していくべきものである。 計画より一年後になったが、平成25年に沖縄での調査を実施する予定でいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、昨年計画していて実施出来なかった沖縄での記述調査をおこなう。沖縄方言の指小辞「グヮ」の記述は、日本語の指小辞の歴史を解明するためだけでなく、消滅の危機にある沖縄の伝統的な方言の記録という意味でも非常に重要な意義がある。 また、東北以外で接尾辞「コ」が指小辞的に使用される愛媛県西条市・喜多郡、高知県土佐郡、大分県宇佐市、新潟県西蒲原郡、富山県砺波市、長野県佐久市での記述調査も予定している。 ただし、これらの地域での指小辞「コ」は、東北の場合と異なりかなり限定された地域で使用され、使用者が少なく記述調査に見合う話者探しが難航することが予想される。教育委員会や公民館など地元の組織に協力いただきながら指小辞「コ」の使用者を探し、見つかり次第随時記述調査をおこなう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に予定している記述調査の地域(沖縄、愛媛県西条市・喜多郡、高知県土佐郡、大分県宇佐市、新潟県西蒲原郡、富山県砺波市、長野県佐久市)に、最低2回調査のために出張した場合、約500000円の費用を使用することになる。
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