2013 Fiscal Year Research-status Report
実践研究理論構築のための調査研究ー実践と教育制度との関係をてがかりにー
Project/Area Number |
24720227
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
市嶋 典子 秋田大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90530585)
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Keywords | 実践研究 / 言語能力観 / 教育観 / 評価 / 対話的アセスメント |
Research Abstract |
本研究では,日本語教育において、概念規定さえ明確でない実践研究の問題を,文献調査と日本語教師および学習者へのインタビューの分析を通して考察した。教師や学習者は,教室において,どのような実践活動を形成しているのか,そして,教育制度や政策は,教師の実践,思考,意識にどう影響を及ぼし,学習者の学びにいかに反映されているのか,これらの実態を検証し,構造を明らかにすることを目指した。その上で,日本語教育学としての実践研究の位置づけを明確化し,実践の構築に寄与する「対話的アセスメント」という新たな理論とアプローチを提案した。 「実践研究」の文献調査においては,1968年から2010年までの42年間に学会誌『日本語教育』に掲載された「実践研究」論文,1604本を調査し,各々の実践の中で,教育観,言語能力観,評価がいかに意味付けられてきたのかの内容分析を行い,評価研究の変遷と合わせて検討した。また,日本語教師にインタビューを行うことによって,日本語教師の実践研究観を明らかにした。先行研究やインタビュー調査から問題を提起するプロセス,問題を踏まえ,実践を設計し,改善していくプロセス,実践から仮説を立ち上げ,理論を構築していくプロセスを往還的に進め,これらのプロセスの実態を「対話的アセスメント」という「実践研究」として詳細に記述した。 この研究によって,日本語教育において,言語能力観や教育観が生成され,変容してきた背景と経緯はいかなるものか,言語能力観や教育観,教育制度によって,評価や実践のあり方はどのように変化してきたのか,そこにはどんな問題があるのかを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査は順調に進展しており,1968年から2010年までの42年間に学会誌『日本語教育』に掲載された「実践研究」論文,1604本を調査し,各々の実践の中で,教育観,言語能力観,評価がいかに意味付けられてきたのかの内容分析を行い,評価研究の変遷と合わせて検討することができた。また,日本語教師へのインタビュー調査についても,国内の日本語教育機関に携る日本語教師を対象としたものについては,網羅的にデータを収集することができた。一方で,海外の日本語教育機関の日本語教師のデータの収集が,やや遅れている。現在までに,主に韓国の日本語教育機関を訪れ,調査を進めている。今後も,海外の日本語教師の実践研究観や機関の実態を明らかにすべく,調査を継続していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,やや遅れている海外の日本語教師へのインタビュー調査を進めていく。 本研究には,日本語教育実践の記述がどのようにして可能かという方法論的な試みが含まれており,理論と実践が精緻化していくプロセスを詳細に記述していくことを重視している。「実践研究」の記述モデルを示すことにより,日本語教育関係者の中で,「実践研究」の枠組や記述方法を共有することが可能になる。このような質的な評価活動の実態の記述によって,評価理論の実践化,実践の理論化を越えた,実践形成過程の検証を対象とした「実践研究」を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初は,海外の日本語教育機関の中でも中東地域を調査地として予定していたが,アラブの春の影響や国際状況の悪化により,調査地を変更せざるを得なくなった。現在は新たな調査地として,近隣国の韓国を選択し,調査を進めているが,当初の予定地であった,中東地域への調査が中断してしまったため,次年度使用額が生じた。 今後の国際情勢を見極め,情勢が安定してきたら,中東地域の日本語教育機関の調査を再開させる。もし,情勢の安定が見込めない場合は,引き続き,韓国の調査を継続していく予定である。また,オーストラリア,イタリアの研究者との交流もあるため,今後,調査を依頼していくことも視野に入れている。
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Research Products
(4 results)