2016 Fiscal Year Research-status Report
協働的な学習環境におけるモニタリングと日本語読解学習に関する研究
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24720230
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 礼子 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (30432298)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 説明 / モニタリング / CLIL(内容言語統合型学習) / 読解 / 授業実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、上級レベルの日本語学習者の読解において重要な理解のモニタリングの働きを促すための学習法として、「他者への説明」が核となる読解活動を提案し、その方法を検討することを目的とする。 説明課題の実践にあたり、CLIL(内容言語統合型学習)の考え方に基づき、内容、言語、思考、協学、という4つの概念を有機的に結び付けることにより教育効果を高めることを目指した。説明課題の実践において、留学生に対応した言語面や思考面におけるスキャフォールディング(足場作り)を行い、授業前後の作文およびその効果を検討した。 説明課題としては、本1冊を学生間で分担し、担当箇所をレジュメ形式でまとめて、それをもとに他者に説明するという活動「分担読解」を実施した。授業時の支援としては、CLILで示されているように、重点を置く言語スキルを設定し、授業時に内容と合わせて言語スキルを身につけるようにした。言語スキルへのスキャフォールディングとして、授業内でのレジュメ作成体験、各学習者が持つ「よい説明」の意識化、説明の評価基準作成を行った。協学面として学習コミュニティを活かした学びの方法として、個人作業ではなく協同(ペア)で一つの課題を達成するよう課題を設定した。分担読解の担当箇所発表の後には、説明者・聞き手とも自己評価を行い、説明技能や内容理解度を評価した。 本年度は、一昨年度と昨年度の実践の結果を取りまとめて分析を行った。実践前後のライティングの比較から、量的な側面では文章の量、構造、語彙の面で増えていることが示された。また、主観的な評価の結果、内容や文章構造の面でライティングの質が向上していることが明らかとなった。CLILを取り入れた実践活動を通して、理解・発信する力を含む学びが生じたことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本語授業における「説明活動」を実践する理論的背景として、新たにCLIL(内容言語統合型学習)を導入し、文章理解へのモニタリングの促進という当初の目的(認知面)に加えて、言語スキルや協学面についても実践内容を改善した。28年度はそれまでに収集したデータの分析およびこれまでの成果を発表した。データ分析を通して本実践の一定の効果を示すことができた。しかし、個々の実践活動の効果を詳細に検討するためには、実践評価の方法を工夫する必要がある。次年度の課題として取り組みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の最終年度となる平成29年度は、当初計画の最終年度に計画していたとおり実験的授業におけるデータ収集と検証を行う。授業において多様な形態での「説明活動」を継続的に実施し、事前事後での読解材料への理解の深まり、学習者のモニタリングへの意識、言語スキルの向上について、効果が見られるかどうか検討する。また、これまでに収集したデータと比較検討して引き続き分析を行う。
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Causes of Carryover |
これまでに産休育休による研究中断があったため研究期間を延長しているが、研究費は当初計画年次で全額支給済みであるため、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度平成29年は研究期間の最終年度にあたる。申請書にある最終年度の計画にしたがって予算執行を行う予定である。
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Research Products
(1 results)