2012 Fiscal Year Research-status Report
日本語教師のためのオンラインICT研修構築に向けた協働的アクション・リサーチ
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24720236
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 智久 北海道大学, 留学生センター, 准教授 (90549148)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ICTリテラシー教育 / 研修デザイン |
Research Abstract |
本研究では、研究代表者がメンター、研究協力者がメンティーとなり、日本語教育におけるICT活用をテーマとし、協働的アクション・リサーチをオンライン上で行うことを計画した。その最大の目的は、日本語教師の自律的なICTスキル能力の向上を図ることである。これにより、(1)ICTスキルを自分の授業に活用できる教員を育てること、(2)効果的なオンラインICTスキル研修プログラムの構築を試みること、(3)研修プログラムの経過、及び、経過から得られた結果をデータベース化しWEB上で日本語教師等へ公開すること、の3つを目指した。 現時点で、(1)と(2)は概ね達成できている。その理由として、研究協力者によるメーリングリスト上での意見交換に加え、研究代表者が日本国内外で開催しているICT活用のための研修会で収集したフィードバックデータから、本当に必要なICT活用のスキルおよび理想的な研修デザインの形が見えて来ているからである。 (3)に関しては、研究代表者が行っている研修会でのヒアリング調査から、必ずしもWEB上に情報が上がっていることが望ましいわけではないことが見えて来た。特にインフラ整備が整っていない国で働く日本語教師にとっては、情報が一冊にまとまっている紙媒体が役に立つということもわかった。 本研究が持つ最大の意義は、日本語教師が必要としているICTスキルの整理がなされたことである。多くの日本語教師にとっては、ICTスキルの何が必要で何が必要でないかがそもそもわからない。更に、必要なICTスキルの習得の仕方もわからない状態である。本研究は習得すべきICTスキルにはどのようなものがあるのかをはっきりと提示し、それらをどのように伝達していくかの研修デザインの検討に入っている。このことにより、日本語教師全体のICTスキル向上へと繋がることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本語教育の教育現場でのICT活用の普及を目指している。そのため、オンライン上で現職日本語教師らによる協働的アクション・リサーチを実施し、日本語教師が必要としているICTスキルには、どのようなものがあるのか、それらのスキルを獲得していく過程で、どのような支援が必要なのか、また、日本語教師にとって有用なICT授業実践報告とは、どのようなものなのかの3点について明らかにすることを研究の目標に設定した。 上記の計画に対して、現在までで進んでいることは、日本語教師が必要としているICTスキルの収集および整理である。当初は、オンライン上でのメールのやり取りから必要とされるスキルを探る計画であったが、オンライン研修に参加を希望した教師から、直接会って話したいとの要望が多かったため、研究代表者が研修参加者の勤務校に赴き意見を聴取し、その補助的なものとしてメーリングリストを活用することにした。その結果、現職日本語教師が必要としているICTスキルには、大きく分けて、「パソコンの基礎知識」、「授業前の準備および教材作成での活用方法」、「授業中にICTを活用する方法」、「情報検索と整理のための活用方法」、「トラブル解決」の5つに大分類できることがわかった。これらの分類をもとに2012年4月刊行予定であった『日本語教師のためのTIPS77 ② ICTの活用』を再構成し、上記の5分類に「日本語教育で使えるフリーソフト」と「ICTの可能性について考える」の2つの項目を加えて2012年8月に刊行した。 課題も残る。当初予定していたオンライン上でのやり取りが参加者から敬遠された原因の究明である。ICTスキルを習得するには、直接詳しい人から聞きたいという意見が圧倒的に多かった。この結果を踏まえた上で、理想的なICT研修のデザインの確立が25年度に残された課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、「パソコンの基礎知識」、「授業前の準備および教材作成での活用方法」、「授業中にICTを活用する方法」、「情報検索と整理のための活用方法」、「トラブル解決」の5つの大項目をどのように研修で伝えていくかの「研修デザイン」の確立を目指していく。 ICTの活用を学ぶ研修では、習ったことを参加したその場ではわかったつもりが、家に帰ると忘れていたり、パソコンのソフトのバージョンが違ったりすると前に進めなくなる事例が数多く見受けられる。このような状況を打破していくために、習ったICTスキルを自分の文脈で取り込むことができるような研修のデザインを検討している。 このために、研究代表者は、実際にICT活用の研修会を日本各地および海外の高等教育機関で開催する。その研修会の参加者からのフィードバックを蓄積していき、参加した教師が自分の文脈で応用できるようになるには、どのような研修デザインとフォローアップ体制が必要なのかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度予算においてにて198077円の繰越額が発生した。これは、平成24年度内に購入予定であったWIndows8搭載パソコンの納期が遅れたためである。このパソコンは平成25年度4月に納入された。 なお平成25年度の研究費の主たる使途は研究代表者による研修会開催および学会発表のための旅費である。この他、ICTを日本語の授業に積極的に取り入れている機関への聞き取り調査旅費、メーリングリスト研修の参加者への聞き取り調査旅費にも使う。
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