2012 Fiscal Year Research-status Report
触覚的補助を用いた特殊拍指導の効果-知覚学習スタイルの影響-
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24720240
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
柳澤 絵美 明治大学, 国際日本学部, 講師 (40511530)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 特殊拍 / 発音指導 / 知覚学習スタイル / 触覚的補助 |
Research Abstract |
本研究は、学習スタイルに注目し、触覚的補助を用いた特殊拍指導の実践と効果の検証を通して、学習スタイルと発音指導の関係を明らかにすることを目標としている。 平成24年度は、日本国内の日本語学校(長沼スクール東京日本語学校)で日本語を学ぶ初中級レベルの日本語学習者を対象に「触覚的補助」を用いた特殊拍指導を実施し、データを収集した。 調査の流れは次の通りである。①学習スタイル調査、②プレテスト(単語レベル・文レベル・絵を見ての発話)、③特殊拍の発音指導(単語・文)、④ポストテスト(②と同様の3種類)、⑤インタビュー調査、⑥3ヶ月後・6ヶ月後のポストテスト(④と同様の3種類)。 調査協力者1名につき約6ヶ月かけて上記の調査を実施し、35名分(⑥は32名分)のデータを収集した。②、④、⑤、⑥で収集した音声は、「単語レベル」は単語ごとに、「文レベル」は1文ごとに切り出し、音声ファイルを保存した(単語レベル4020ファイル、文レベル2546ファイル)。「インタビュー調査」は、全発話を文字起こしし、Wordファイルで保存した(計608分の発話)。なお、「絵を見ての発話」の文字起こしは平成25年度に実施予定である。 本研究では、これまで発音指導において注目されてこなかった学習者の個人要因の1つである学習スタイルに着目し、触覚的補助を用いた特殊拍の発音指導を行った。本研究を通して、学習スタイルと発音指導の関係を明らかにすることができれば、今後、特殊拍の指導方法を検討する上で、有用な資料となるといえる。また、レベルが揃った30名以上の学習者に継続して調査を実施できたことで、指導の効果の検証もより充実したものになると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
触覚的補助を用いた特殊拍指導の効果をより詳しく検証をするために、発音指導の3ヶ月後、および、6ヶ月後に再度ポストテストを実施した。その結果、当初の予定よりデータの収集に時間がかかり、集計・整理するデータ数も増えたため、進度に若干の遅れが出ている。しかし、この追加データによって指導の効果がどの程度継続するかを明らかにすることができるため、3ヶ月後と6ヶ月後のポストテストの実施は、本研究をより質の高いものにするために有効であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度に実施した調査で収集した学習者の音声(指導前のプレテスト・指導後のポストテスト)の評価と分析、および、研究成果の報告を行う。 音声の評価は、まず、「単語レベル」、「文レベル」、「絵を見ての発話」に分けて実施し、その後、3つのレベルによって指導の効果に違いが見られるか比較・検討する。音声の評価は「単語レベル」と「文レベル」については、「SuperLab」(Cedrus)を用いて、音声をランダムに並べ替え、その音声を日本語音声教育の専門家3名が聴取して、リズムの自然さによって1(不自然)~5(自然)の5段階スケールで評価する。「絵を見ての発話」については、文字起こしされたテキストを見ながら、音声を聴取し、リズムの自然さを5段階で評価する。 評価の結果は、一元配置の反復測定分散分析、および、TukeyHSDによる多重比較検定を用いて分析する。そして、(1)触覚的補助を用いた特殊拍の発音指導がさまざまな学習スタイルを持つ学習者の特殊拍の発音の習得に影響を与えるか、(2)学習スタイルによってその効果に違いが見られるか、(3)「単語レベル」、「文レベル」、「絵を見ての発話」で効果に違い見られるか、どのレベルまで指導の効果が影響を及ぼすかについて検証し、考察を行う。考察の際には、指導時やプレテスト・ポストテストの際に学習者から観察された学習行動の裏付けや参考資料として、インタビュー調査で得られたデータも活用する。 一連の研究を通して明らかになった結果は、研究会や学会で発表するとともに、学会誌などに論文として投稿し、報告を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、音声の評価者、および、データの集計・整理の担当者への謝金、学会発表(日本語教育学会、日本語教育方法研究会)のための旅費、研究成果をまとめた報告書の作成に使用していく予定である。
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