2013 Fiscal Year Research-status Report
日本語教育におけるブレンディッドラーニングの有効性の検証
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24720243
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
古川 智樹 関西大学, 国際教育センター, 留学生別科特任常勤講師 (60614617)
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Keywords | ブレンディッドラーニング / マルチモーダル / eポートフォリオ / eラーニング / 微視的分析 / 日本語教育 / ICT環境 |
Research Abstract |
本研究の目的は、未だ研究が進んでいない日本語教育におけるブレンディッドラーニング(Blended Learning: 以下BLとする)の有効性を検証することである。本年度は、授業内外で用いるeポートフォリオシステム及びシステムに実装したeラーニングの利用実態調査(ログ解析)、BLと学習者特性との関係性の分析、そしてBL環境下におけるマルチモーダルな視点を取り入れた微視的分析を行った。 その結果、まず、学習者のeラーニング利用実態調査では、平成24年度の結果では課題提出率が時間の経過とともに70%まで落ち、その要因として問題数の多さ、教員とのインターアクションの欠如が明らかにされていたが、それらを改善すること(問題数の削減、教員によるフィードバックの増加)によって課題達成率が約80%、最終成績との相関が平均0.7まで上昇した。そして、学期終了後のアンケート調査でもBLによる日本語の学習に効果があったと肯定的に回答している学習者は70%に上り、BLによって授業外での自律的な学習が促進されていることが明らかになった。また、BLと学習者の特性との関係性については、学習者個人の学習方略、eラーニングによる学習経験、学外での学習時間の3つの特性がシステムの利用及び課題達成率に影響を与えていることがわかった。 次に、BL環境下における微視的分析では、講義、ディスカッション中にインターネット、クリッカーの使用を許可し、学習者間のやり取りを分析した結果、講義における内容理解に関して、学習者個人の問題がインターネットを介して学習者全体に共有され、問題に関する気づきや理解の促進が促され、学習者間のやり取りが公的な授業の流れにも寄与していること、また、ディスカッションにおいては、インターネットの情報を引用することによって表現の多様性が増し、議論の内容がより深化していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は、日本語教育において、広義/狭義両面におけるブレンディッドラーニングがどのように有効に機能しうるのか、ICT (information communication technology)利用環境下における授業やeポートフォリオシステム、eラーニングの利用状況を、数量的分析とマルチモーダルな視点を取り入れた微視的分析を行うことによって検証し、その有効性を明らかにすることである。 本年度は、調査の2年目として、初年度に引き続き、eポートフォリオシステム及びeラーニングの利用実態調査を行った。そして、マルチモーダルな視点を取り入れた微視的分析を行うための学習者のICT利用のデータ収集を年間を通して行い、その文字化作業(言語、非言語行動の記述)もおおむね終了し、分析に入っている。本年度は以上の調査から学習者のeポートフォリオシステム、eラーニング利用実態状況、ICTを利用した学習者間のインターアクションの分析を行い、その成果の発信も行うことができたため、当初の計画通り、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成26年度)は、平成24、25年度で得られたデータをもとに、データの信頼性を上げるため、データ収集を引き続き行い、学習者のeポートフォリオシステム、eラーニングの利用実態調査及びマルチモーダルな視点を取り入れた微視的分析を行い、日本語教育におけるブレンディッドラーニングの効果検証の分析結果をまとめる。 具体的には、平成24、25年度と同様のデータ収集を継続して行い、eポートフォリオシステム、eラーニングの利用実態調査に関しては、どのような学習者が積極的にシステムを利用し(あるいは使用せず)、ブレンディッドラーニングに対して肯定的/否定的評価をしているのか、学習者の特性との関係、因子を明らかにしていくとともに、学習者の日本語能力の向上度との関係も、統計処理を行って分析する予定である。また、微視的分析に関しては、授業内外における学習者間のやり取りを分析し、ICTが介在することによってそのやり取りがいかに変容するのか、そして、そのやり取りは日本語の学習に効果的に働いているのか(あるいは学習の妨げになっているのか)を、これまでの研究に引き続き明らかにしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、当初は海外での研究発表を予定していたが、同時期に行われた国内での発表を優先させたため、その費用が消費されず、次年度使用額が一部生じた。 次年度では、eポートフォリオシステム、eラーニングの利用状況、ICTを利用した学習者間のやり取りのデータを引き続き収集し、データの文字化と資料整理を行う必要があり、またeラーニングの問題作成・修正も随時行っていく。そのため、RAを雇用し、データの文字化、整理、アーカイブ化、eラーニング問題の作成・修正を行う予定である。 そして、分析で得られた研究成果の発信のため、国内外において発表を行う。具体的には、2014年8月(採択済み)、2015年3月に海外での発表を予定しており、国内の学会においても2014年9月、11月に発表を予定している。また、成果論文も2本執筆を計画しており、国内の学術誌を中心に投稿する予定である。
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Research Products
(8 results)