2012 Fiscal Year Research-status Report
第二言語における定型表現の習得と処理およびその英語指導への導入のあり方について
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24720261
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
奥脇 奈津美 都留文科大学, 文学部, 准教授 (60363884)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / formulaic sequences |
Research Abstract |
本研究では、1つのまとまりとしてあらかじめ記憶の中に備わっているパターン化した表現として定義される定型表現(formulaic sequences)に注目し、第二言語学習者が、それをどのようにメンタルレキシコンに記憶し、習得し、処理しているのかを考察した。今年度は、主に理論的研究を行い、次年度の実証研究への枠組み作りの準備をした。 はじめに、定型表現の理論的背景、定型表現の定義や種類に関する先行研究について考察したうえで、定型表現の種類が言語習得に与える影響、言語使用における役割、言語習得におけるワーキングメモリの役割について研究するなど、理論的研究を深めることができた。また、母語話者による定型表現の使用と流暢性に関して文献研究を行い、これまでとは異なる「語彙」の捉え方について新しい認識を得た。これらの研究から、第二言語学習者による定型表現の使用やその処理、流暢性との関係を考えるにあたっては、ワーキングメモリの影響を調べていく必要があるという認識に至り、その考察を論文としてまとめて発表することができた。 さらに、第一言語獲得と第二言語習得における定型表現について、1970年代の先見的研究から2010年代の最新の研究まで詳細に検討することができた。最近の研究論文では、特に定型表現の言語処理が注目されているトピックであることを確認することができ、今後も最も注目されるトピックのひとつであろうこともわかった。これらの新しい論文にあたりながら、次年度の実証研究の枠組み作りに着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、主に理論的研究を行い、「定型表現」のさまざまな定義、これまでの研究の流れ、母語話者と第二言語学習者による使用や言語処理にみられる相違、習得にみられる困難点、ワーキングメモリとの関連性などについて、理論的研究を中心におおむね順調に研究を進めることができた。そして、次年度の実証研究へ向けて、実験の枠組みを作成し始めることができた。定型表現研究のための方法論については、今後さらに文献研究を進める必要がある。 また、定型表現使用と流暢性の関係について研究するなかで、ワーキングメモリの役割を考察する必要があるという認識にいたり、その概念や言語習得における影響などについて研究し、論文にまとめることができた。また、第一言語獲得や第二言語習得における定型表現の役割について、古典的な文献から新しいものまで考察することができたが、テンス・アスペクトに関わる定型表現とその意味の習得については、今後文献研究と実証研究を進める必要がある。 このように、今年度の目的はおおむね達成でき、今後の研究への基盤を作ることができたという点で、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、定型表現の知識と第二言語能力の関係、またスピーキング能力やライティング能力との関係について、理論的研究を深め、データを集めて調査を進めていく。長期的なデータを収集する予定もあり、言語使用のデータを質的に分析するため、データ収集・分析には時間がかかることが予想さる。データ収集の協力者への依頼、データ分析の協力者への詳細説明なども含め、計画的に進めていく必要がある。 まずは、上記のような定型表現使用に関するデータを集めるが、その後、言語処理についての実証データのための実験を行うことにする。そして、最終年度の学会発表、論文投稿へと向けての準備を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費は、書籍や消耗費など、理論的研究に必要なもの、また、パソコン周辺機器など、データ収集と分析に必要なものを購入するために使用する。旅費は、理論的研究を深め、実証的研究の妥当性を検討するため、国内外の学会や研究会に参加するために使用する予定である。次年度はデータ収集が主な目的となるため、データ収集・分析協力者への謝礼、言語調査参加者への謝礼、データ整理のために学生アルバイトを使うための人件費として、謝礼等を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)