2014 Fiscal Year Annual Research Report
第二言語における定型表現の習得と処理およびその英語指導への導入のあり方について
Project/Area Number |
24720261
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
奥脇 奈津美 都留文科大学, 文学部, 准教授 (60363884)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 定型的表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
第二言語(L2)使用者にとって、上級レベルに至っても、定型的言語表現(FS: formulaic sequences)を使いこなすことが容易でないことが多くの研究で指摘されている。FS使用とその習得については、言語能力の各領域においてFS知識との関連性が指摘されているが、本研究では、十分な研究がなされているとはいえないL2ライティングとFS使用の関係について調査した。 まず、FSに関するこれまでの研究について検討し、言語学習、言語使用におけるFSの重要性について議論した。次に、71名の英語学習者からL2ライティングのデータ(英文エッセイ)を収集し、先行研究で提案されているFSタイプに基づいて、FSの使用頻度やタイプについて詳細に調査し、それらとL2熟達度およびライティング評価との関連を検証した。その結果、FS使用とL2熟達度、ライティング評価との間に、先行研究で示された強い相関はみられなかったが、L2熟達度が上がるにつれて、学習者は少しずつ、FSをより多く使用するようになることが示された。 このことから、本研究の結果は、FSの使用頻度とL2熟達度に明らかな相関が現れるのが、L2能力が一定レベルに達した後のことであることを示すものであると考えられた。学習者が十分にFSを使用できるようになるためには、一定のL2能力の発達が前提になるということである。一方、L2能力が向上するのに伴い、L2ライティング力自体は向上することも明らかになった。 このように、言語に広くみられる定型性であるが、その習得は容易ではないことが確認された。FS項目は、偶発的学習が起こりにくく、上級レベルでもその習得は困難を極め、発達には多くの時間と経験を要するのであろう。さらに、教授効果も現れにくいと予想されるため、効果の検証と教授方法の探求が今後大きな課題であろうことを指摘した。
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