2012 Fiscal Year Research-status Report
学習者の特性がジャンル・アプローチに及ぼす影響―教材開発に向けて―
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24720272
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
マスワナ 紗矢子 早稲田大学, オープン教育センター, 助教 (60608933)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 英語教育学 / 学術目的の英語 / ジャンル・アプローチ |
Research Abstract |
英語アカデミックライティングで注目されているジャンル・アプローチの有効性を学習者の特性という観点から検証するため、まず、オンライン教材開発に向けたデータ収集の準備を行った。申請者が構築した、経済学、工学、医学の学術論文の序論コーパスを用いて、Swales & Feak (2000, 2004)に掲載されているタスクや課題を参考に、ジャンル・アプローチに基づく教材を作成した。教材のはじめと最後に、学習者が行っている専門分野の研究についての論文序論を書くようにした。 次に、学習者特性質問項目を選定するため、英語習熟度、知能特性、動機づけのアンケートについて学生(学部生、院生を含む)10名に対して予備調査を行った。知能特性を測定するため、ガードナーの多重知能理論(MI理論)に基づいた質問項目(Christison, 2005)を参考に特に本研究が対象とする学習者に関連の高い知能特性をいくつか選択した。動機付けは、一般的な学習意欲と特定目的の英語に対する動機付けの二つを扱った。また、Oxford(1990)の学習方略調査SILLも取り入れ包括的な学習者特性を捉える質問紙を作成した。予備調査では、質問紙調査のみならずインタビュー調査も行い、質問項目に対する感想や教材使用に対するフォローアップを行った。 予備調査から、関連性の低いものや項目の重なりなどを削除した。教材については、QuizCreatorといったソフトを使いタスクを作り、使い具合などを判断した。最終的にはオンライン上でアンケートおよびタスク回答ができるようにサイトを立ち上げ、試験的に質問項目および教材にアクセスが可能となっており、本調査に向けた準備が整っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備調査は終わっており、オンライン教材も用意されているため、おおむね年度の目標を達成しているといえる。しかしながら、オンライン教材の形成的評価がまだ終わっていない段階であるため、この点を急ぐ必要がある。 また、序論の執筆には、各参加者がすでにどのくらい研究活動に参加しているかで序論内容の具体性や提示教材の理解度に大きな違いが出てくることが予備調査から明らかになった。この点をいかにコントロールするかが新たな課題となり、タスク内容などを現在調整している。オンライン上で学習者のライティングおよびアンケート結果を収集することができるため、コンテンツの修正や改良は時間と手間および費用を抑えることができるので研究の進度に大きな影響はないと考える。また、タスクの内容を変えるのではなく、予備調査では専門分野や学年が異なる参加者であったのを、本調査では同一の専門分野で同一学年の学習者を対象とすることで対応することも可能である。質問紙については、被験者数に適した質問項目数に配慮してアンケートを完成させ、英語習熟度、知能特性、動機づけ、学習方略といった学習者特性についての調査可能な項目を選出することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
オンライン教材の実践とアンケートの回答を行ってもらう。オンライン教材へは、3ヶ月のアクセス期間を設け、参加者は好きな時間と場所でインターネットにアクセスして学習およびアンケートを行う。オンライン調査と並行してアカデミックライティング授業での協力も京都大学で予定している。実施後に、参加者数名に対してインタビュー調査を実施し、アンケート調査を補完する。参加者は全体で100名程度を目標としている。 次に、学習者のタスクおよびライティング(序論最終稿)を採点する。主として申請者が採点するが、ライティング指導経験のあるネイティブ教員にも採点を依頼し、評価者間信頼性を検討する。学習者特性の測定については、探索的因子分析を行い、学習者特性の因子を特定する。そしてタスクおよび最終ライティング評価スコアと、抽出された特性因子との相関を明らかにするために重回帰分析による統計処理を行い考察を加える。ここでは、タスクとライティングを統合したスコアと別々のスコアを用いることにより、タスクとライティング遂行に与えるそれぞれの学習者特性についても検証を加える。 最後に、オンライン教材および学習者特性の考察から得られた知見をまとめ、国内外の学会で発表する。また、研究結果を学術論文としてまとめ学会誌に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費122,000円:オンライン調査に必要なNTTレンタルサーバー(月3千円×12)、データ分析のために必要な統計解析ソフト、ジャンル関連図書 旅費 248,000円:国内調査、学会での発表 人件費謝金 430,000円:被験者謝金(内訳)110人×1件3時間3千円、インタビュー(内訳)10人×1件1時間1千円 採点者謝金(内訳)1時間1千円×30時間(110人分) 被験者への説明,データ整理(内訳)2人,1時間1千円×30時間
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