2012 Fiscal Year Research-status Report
英語熟達度とコミュニケーション能力一般の関係の検討:大学英語を事例とした基礎研究
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24720275
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山中 司 立命館大学, 生命科学部, 講師 (30524467)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | プロジェクト発信型英語プログラム / 制度論 / 組織論 / 評価論 / コミュニケーション論 / 哲学 / プラグマティズム / 大学英語教育 |
Research Abstract |
初年度である2012年は、既存の知見を整理することを試み、以下のアブストラクトで英文によるペーパーの投稿を行い、これが当該年度の実績を要約している。(立命館高等教育研究13号) 「プロジェクト発信型英語プログラム」が鈴木によって考案、実践されて20年以上が経つ(鈴木 1994, 2003, 2012)。その間プログラムは進化、発展を続け、今日では、立命館大学生命科学部、薬学部、スポーツ健康科学部、大学院生命科学研究科に於いて学部共通カリキュラムとして制度化され、より多くの学生がプログラムの恩恵に浴することができるようになってきた。国全体としての大学英語教育が停滞する中、コミュニケーションを重視し、確実な英語力の向上を成し遂げてきた本英語プログラムは、「うまくいく」英語教育として今後様々な教育機関で参考とされ、取り入れられていく可能性が高いといえよう。 本論考は筆者がこれまで鈴木のもとで研究指導を受け、また補佐として英語プログラム運営業務に携わる中から、「プロジェクト発信型英語プログラム」が今後充実させていくべき研究内容を幅広い視点から整理し、その各々に筆者の試論を加えたものである。具体的には制度・政策論、哲学・コミュニケーション論、そして評価論の見地から研究の可能性を述べている。当然のことながら、ここでの議論が「プロジェクト発信型英語プログラム」の研究の地平を網羅しているわけではない。しかしここで取り上げる論点ですら、幅広い専門性を持つ集団によるコラボレーションが必要なのであり、本論考は論点の一端を明るみにし、整理することを試みた。これにより多くの研究者による「プロジェクト発信型英語プログラム」の研究が活性し、プログラムの更なる発展に貢献できれば幸いである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は学習者個々の英語熟達度とコミュニケーション能力との関係を探り、大学英語教育分野における「コミュニケーション能力とは何か」という根本的問題に対する基礎的知見の提供を試みるものである。本研究は大学英語教育におけるコミュニケーション能力の解明のため、英語の言語的熟達と種々のコミュニケーション活動におけるパフォーマンスとの関連を探り、言語的熟達がコミュニケーション能力を推定する有効な物差しとなり得るかどうか検討する。 本研究は「コミュニケーション能力」を「言語コミュニケーション能力」に限定せずあくまで広義に捉える。このことにより既存の研究にはない成果や視点が得られるものと考える。というのも、実際のコミュニケーションが言語を用いつつも、言語だけで行われないことは明らかであり、コミュニケーション重視の大学英語教育が言語メディアだけを評価するのは矛盾であるとすらいえよう。言語をコミュニケーション活動のあくまで一部として捉え、非言語表現をふんだんに用いた活動全体をコミュニケーションとして評価することが適切であり、それを遂行する能力(competence)こそが「コミュニケーション能力(communicative competence)」でなければならない。既存の応用言語学研究が言語至上主義的傾向を持つことはすでに数多くの批判がなされており、現状、英語教育評価はこの点に強く束縛されていることは否めない。 初年度である2012年は基礎的知見の収集と整理に充てた期間と考えており、先行する調査結果の収集、独自調査(ヒアリング、質問紙調査、参与観察)等を行った。予定した研究内容を概ね遂行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はコミュニケーションを重視した昨今の英語教育政策並びに教授法研究に即した最新の知見を提供し得るものと考えられ、既存の第二言語習得研究とは一線を画し、コミュニケーション能力そのものの評価という観点において、独自の貢献ができるものと思われる。 今後は研究最終年度として、理論パラダイムの検討、扱える学習者統計データの整理・分析・考察(関係諸機関へデータ提供を依頼する)、言語熟達度評価基準の検討(TOEFL、TOEIC、GTEC、IELTS、ACTFL、英検等)、データ分析、仮説検証とモデリング、Webページ等による成果発信と評価モデルの提供を行うことを具体的に計画している。 本研究の遂行においては、最終的に以下の各々の点に何らかの理論的回答を与えることが必要となり、これが即ち研究課題となる。下記課題の各々に回答できることにより、英語教育の実践を担当する現場教員にとってフィージビリティのある評価モデルが提示できる。 (a) 言語的熟達度を測定・評価する上で、いかなる指標(やテスティング)を採用、実施することが妥当性が高く、適切に言語能力を評価していると言えるのか。(b) コミュニケーション活動を評価し、一応の妥当性を持った判断尺度とするには、いかなるコミュニケーション活動を取り上げ、いかなる項目や基準で評価することが妥当なコミュニケーション活動の評価と言えるのか。(なおこの場合、個々の刹那的なコミュニケーション「活動」の評価であり、直接的に学習者当人のコミュニケーション「能力」を評価・測定しているわけではない) (c) 言語的熟達度とコミュニケーション活動に相関が見られる、見られない、下位もしくは上位レベルの言語的熟達度と相関が見られる、見られないをどう判断し、説明するか。(d) 言語的熟達度とコミュニケーション能力との関係性をどうモデリングし、いかなる理論的支持を与えるか。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は調査、文献研究を主とした基礎研究としての性格を持つものであり、資料及び現地調査に関わる実費、並びに中間経過を適宜報告するための学会参加のための費用がその大部分を占める。なお最終年度については、基礎研究の知見を広く一般に公開するため、Webページを主として結果を広く還元するため、Webデザイン等の費用及びそのための謝金等が別途発生することを想定している。 本研究に関わる研究経費に関しては、調査・収集活動に必要な最低限の物品の購入を除いて、高額物品の購入は行わない。また海外調査は年1回以上は行わず、国内調査及び研究打ち合わせについても、可能性に応じてテレビ会議やメールによる調査を行うなど、移動に関わる経費を最低限度に抑え、適切かつ効率の良い経費の執行を行う。
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Research Products
(2 results)