2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720287
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小倉 真紀子 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (30609897)
|
Keywords | 日本古代史 / 土地制度 / 土地売買 / 田令 |
Research Abstract |
本研究は、日本古代律令制下における土地に関する財産権の内容と特質を解明することを目的とするものである。古代律令制下の土地売買についての先行研究では、専ら売主側の「買い戻しができる」という権利に注目して売買の特質を論じており、買主側の権利についての追究が十分ではない。したがって、本研究では、買主側の権利に着目して土地の売買関係史料の分析を行い、その結果を踏まえて土地に関する権利の内容や特質を明らかにする。 本年度は、日本と中国・唐の田令に見られる土地売買関係条文を比較して、日本古代の田制に規定された売買の内容について考察した。また、土地売買の具体的な史料である売券を再検討して、先行研究で指摘されてきた売主側の権利を確認すると共に、史書に残る長岡京建設予定地の買い上げと平安京遷都時の処分に関する記事(『続日本紀』延暦3年(784)6月丁卯条・『日本紀略』同12年(793)12月壬戌条など)を検証した。平安京遷都時における長岡京用地の処分に関する史料の分析からは、これが従来理解されてきたような宅地の悔返しを禁じたものではなく、宅地の「価直」(すなわち売買の代価)の悔返しを禁じたもので、具体的には、平安京遷都によって不用となった長岡京用地をかつての地主であった百姓に買い戻させる行為を禁止した史料である、という結論を導き出した。この事例は、永久的な使用が予定される宮城用地の売買であっても旧地主による買い戻しが当然の手続きとして期待されていたことを示すものであり、日本古代の土地売買では、売主が売買解除(土地の返還請求あるいは買い戻し)の権利を有していたのと同時に、買主にも売買解除(売主に対する土地買い戻しの請求)の権利が与えられていたのではないか、という見通しを得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画では、初年度に土地売買の契約内容を、本年度に売買以外の権利移転関係史料を検証する予定であったが、実際には初年度に売買以外の契約である譲渡(寄進)について扱ったため、本年度に土地売買に関する考察を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度は土地の譲渡(寄進)に関する史料、本年度は土地の売買に関する史料を中心に検証を行ったので、次年度はその他の土地関係史料を必要に応じて分析対象に加えつつ、研究全体の成果をまとめることを目標とする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
納品時期の都合で前年度使用せず本年度に使用した中国関係図書(輸入書)の価格が当初の想定より安価であり、また、古書店で購入する必要があった図書の価格も当初の見積もりより概ね安価で済んだため。 本研究課題の遂行に必要な図書・資料の購入に当てる他、研究成果の保存媒体としてパソコン関係機器の購入を検討している。
|