2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24720287
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小倉 真紀子 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (30609897)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 日本古代史 / 土地制度 / 法制史 / 初期荘園 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本古代律令制下における土地に関する財産権の内容と特質を解明することを目的とするものである。 平成24年度は、東南院文書第3櫃第41巻所収文書を研究対象とし、8~9世紀の山城国宇治郡内における家地売買関係文書と、同時期の宇治華厳院への土地寄進関係文書を検証した。平成25年度は、日本と中国・唐の田令に見られる土地売買関係条文を比較して、日本古代の田制に規定された売買の内容について考察した。また、土地売買の具体的な史料である売券を再検討すると共に、史書に残る長岡京建設予定地の買い上げと平安京遷都時の処分に関する記事を検証した。両年の研究成果で特に重要なのは、日本古代の土地売買における売主と買主の権利について先行研究では指摘されていない見解を導き出した点で、売主が売買解除(土地の返還請求あるいは買い戻し)の権利を有していたのと同時に、買主にも売買解除(売主に対する土地買い戻しの請求)の権利が与えられていたのではないか、という見通しを得ることができた。 平成26年度は、東大寺文書(未成巻文書)に残存する延暦12年(793)の播磨国赤穂庄関係文書を研究対象とし、農作地ではない荘園(赤穂庄は製塩に必要な木材を伐り出す塩山として存在)の領有について検証した。そして、従来の初期荘園研究で専ら対象とされてきた農作地の荘園のあり方を含めて、日本古代の「庄」とはどのような性質の土地であったのか、という点について考察した。その結果、庄は本来は倉屋などの建物を伴う私的領有地で、領主の経済的な活動拠点として機能したこと、庄が農耕の拠点として設けられる場合には農地も庄に含まれたこと、農地を含む庄は墾田永年私財法の施行後に大規模化するが、依然として農地を含まない庄も存続したこと、農地の有無に関わらず庄の経営方式は基本的には同じであったこと、等の結論を導き出すことができた。
|