2012 Fiscal Year Research-status Report
大正期から昭和戦前期における技術官僚の政治史的研究
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24720292
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若月 剛史 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (30625744)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 日本政治史 / 政官関係 / 内務省土木局 / 土木史 / 官僚制 / 政党政治 / 工政会 / 土木協会 |
Research Abstract |
本研究の直接的な目的は、大正期から昭和戦前期にかけての土木系技術官僚の政治的な動向を検討することを通じて、当初は政友会・民政党の二大政党に自らが志向する政策の実現を期待していた技術官僚が、厳しい財政的制約の下で政党内閣によって彼らの政策要求が満たされなかったため、二大政党に対する反発を強めていく過程を明らかにすることである。そのうえで、最終的には、これまで満州事変と世界大恐慌の発生といった外在的要因で説明されてきた政党内閣の崩壊について、政党内閣が持つ内在的要因、すなわち官僚制との間で形成されつつあった協調関係の崩壊によって説明する道筋を提示したいと考えている。 本年度前半では、政党内閣期における土木系技術官僚の動向を、工政会や土木協会、道路改良会などの諸団体が発行した機関誌の分析を通じて検討を加えた。その成果に基づいて、日本選挙学会で「政党内閣期における技術官僚の政党・選挙観」、土木史研究発表会で「政党内閣期(1924~1932年)における土木系技術官僚の政治史的研究」と題する報告を行った。これらの報告の一部は、2013年度に公刊される予定の著書にも反映されることになっている。 本年度後半では、政党内閣崩壊後における土木系技術官僚の政治的な動向を明らかにする一環として、国立国会図書館憲政資料室や東京大学工学部の各図書室で資料収集を行った。まだ十分に資料が集まっていないため、具体的な成果を出すまでには至っていない。来年度の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、大正期から昭和戦前期における土木系技術官僚の政治的動向を明らかにする一環として、彼らの動向に関する記事が多く掲載されている技術系団体の発行する機関誌を中心に検討を加えるとともに、彼ら自身が残した個人文書についても調査を行う予定であった。 各団体の機関誌については網羅的に調査することができたが、個人文書については、史料的な制約もあって、本研究に資するような史料を発見することはできなかった。しかし、調査の成果に基づいた学会報告で示したように、政党内閣期を通じて、土木系技術官僚と政党内閣との関係が協調から対立へと変化していく流れを明らかにすることができたと自負している。 また、政党内閣崩壊後における土木系技術官僚の動向を示す史料も相当程度集まりつつあり、来年度以降、その成果を公表することができると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、政党内閣崩壊後において、技術官僚が政党を排除した政策形成を移行するようになっていく過程について検討を加えていく。具体的には、①時局匡救事業の展開過程と、②土木会議での審議過程について明らかにしていく予定である。 ①については、国立国会図書館憲政資料室や土木学会附属図書館に所蔵されている関係者の個人文書(新居善太郎関係文書や青山士関係資料など)を調査する。同時に、時局匡救事業の立案過程に関する記事が掲載されている『道路の改良』や『水利と土木』、『土木工学』といった土木系雑誌について検討を加えていく。 ②については、国立公文書館に所蔵されている関係史料の調査を行う。しかし、土木会議に関する公文書は断片的にしか残されていないので、その欠を当該期の新聞や前述した土木系雑誌、当事者の関係史料などで補っていく予定である。次に、実際の審議において、土木系技術官僚が有していた省庁の枠組みを超えた技術者のネットワークが大きな役割を果たしていたと推測されるため、他省の技術官僚の関係文書についても調査を行う。具体的には、鉄道博物館の所蔵資料や逓信総合博物館所蔵の稲田三之助文書、東海大学所蔵の松前重義関係資料などを考えている。さらに、二大政党側が土木会議の審議に対してどのように対応しようとしたのか、『政友』、『民政』などの政党機関誌や帝国議会の議事録、その他刊行されている諸史料(『斎藤隆夫日記』など)の検討を通じて明らかにしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては、時局匡救事業の展開過程や土木会議での審議模様を明らかにするために必要な経済史・土木史に関する文献を50冊程度購入する必要がある(約25万円を使用する予定)。また、国立国会図書館憲政資料室や土木学会付属土木図書館、国立公文書館などで資料収集を行う他、京都府(京都府立総合資料館)、千葉県(千葉県文書館)、埼玉県(埼玉県立文書館)などに出張して史料収集を行う(約15万円を使用する予定)。 また、収集した史料の整理のため、大学院生を10日間程度雇用する予定である(約10万円を使用する予定)。
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