2012 Fiscal Year Research-status Report
近世身分制の解体と村・地域社会―熊本藩領の金納郷士を事例に―
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24720298
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
今村 直樹 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (50570727)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 在御家人 / 地域社会 / 近世身分制 / 明治維新 / 熊本藩 |
Research Abstract |
本研究は、日本における近世身分制の解体と近代社会の生成をめぐる特質を探る目的のもと、永青文庫細川家資料における藩政史料を分析の中心にすえ、熊本藩領における金納郷士と村・地域社会との具体的な関係、および金納郷士制の解体過程を、近世後期から明治前期までのタイムスパンで明らかにするものである。 研究初年度にあたる平成24年度は、主に細川家資料における藩政史料(「口書」などが中心)、ならびに熊本県内の旧金納郷士家所有史料の調査・撮影・分析を実施した。その結果、近代移行期熊本藩領における金納郷士制の展開を、藩政側と地域側の双方の視点から明らかにすることが可能になり、国家的な編成を重視する従来の研究成果とは異なり、社会の内在的な動向から近世身分制の解体について議論できる前提を得た。 併せて、永青文庫に匹敵する史料群である伊豆韮山江川文庫の調査にも着手し、日本近世における代表的な藩政史料と代官所史料の比較検討をも視野に入れ始めた。 以上で得た知見については、「19世紀熊本藩領の地域行政機構と『零落村』管理」(近世史研究会・近現代史研究会11月合同例会)、「近代移行期熊本藩領の金納郷士と地域社会」(日本史研究会12月例会)などの研究報告、ならびに論文「19世紀熊本藩領の地域行政機構と『零落村』管理」(静岡大学『人文論集』63-2、2013年)という具体的な成果で、中間報告を行った。なお、日本史研究会12月例会の報告については、平成25年度以降に論文化して公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
その理由は、当初の研究実施計画で予定していた、①永青文庫細川家資料における藩政史料(「口書」を中心)の調査・撮影・分析、②熊本県内の旧金納郷士家所有史料の調査・撮影・分析、③和歌山県での和歌山藩郷士関係の文献・史料の調査、④熊本大学文学部附属永青文庫研究センター主催「藩研究シンポジウム」(仮称)での研究発表のうち、③を除く三点については、ほぼ達成できたからである。 ①では、「口書」の量が予想以上に膨大であり全点の調査までは至らなかったが、それ以外の関連史料(「覚帳」「町在」など)に関する調査は、ほぼ終了することができた。②については、当初の計画どおりに実施することができ、④は「藩研究シンポジウム」の開催が平成25年度となったため、そこでの発表自体はできなかったが、代わりに日本史研究会12月例会などで、研究成果の中間報告を行うことができた。 また、今年度に達成できなかった③についても、代わりに平成25年度予定していた高知藩郷士関係の文献・史料の調査を、部分的に実施することができた。 総じて、当初における研究目的と研究実施計画は、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の具体的な推進方策としては、当初の研究実施計画のほか、今年度に調査を終了することができなかった細川家資料における藩政史料(とくに「口書」)の調査・撮影・分析、また同様に実施できなかった和歌山県・山口県などでの郷士関係の文献・史料調査を行う。 以上で得た知見に関しては、年度後半に予定している永青文庫研究センター主催「藩研究シンポジウム」での研究発表、または学術論文などのかたちで、順次公表していく予定である。 なお、当初の研究実施計画にはなかった伊豆韮山江川文庫の調査についても、永青文庫細川家資料との比較検討は、今後大きな研究の発展性を秘めるものであり、平成25年度も継続していきたいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には、使用予定の研究費が36万5千円余生じることになった。これは、当初計画していた「史料撮影用デジタルカメラ」など機材一式の購入が、選定などに手間取り今年度できなかったからである。この点に関しては、すでに購入予定の機材選定などを済ませており、平成25年度の早い段階で購入する予定である。
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Research Products
(8 results)