2012 Fiscal Year Research-status Report
被爆直後(1945-1948)の広島・長崎「復興」に関する研究
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24720300
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
桐谷 多恵子 広島市立大学, 付置研究所, 講師 (30625372)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 被爆者 / 復興 / 違和感 / 被爆地 / 占領軍 / 地方行政 / 日本政府 |
Research Abstract |
本研究課題「被爆直後(1945-1948)の広島・長崎『復興』に関する研究――被爆者関係史料の発掘と復興史上の意義の考察――」は、1945年後半から1948年に対象時期を限定し、被爆者の実体験から広島・長崎両市の「復興」を歴史的に考察することを目的としている。 平成24年度の研究実施の報告として最も評価できる点は、既成の研究蓄積が乏しい長崎の被爆問題について、貴重な史料や証言を収集することができ、研究調査を更に発展させることができた点である。 具体的には、聞き取り調査においては、長崎の証言の会の協力のもと、被爆者の方々への面接調査、及び史料調査を行うことができた。浦上地区や旧市街地の被爆者など、様々な立場の被爆者にそれぞれの戦後史について面接調査を行うことができた。予想以上に、市民生活から見た「復興」に関する貴重な証言を得ることができ、大変有意義な聞き取り調査となった。また、長崎原爆資料館において長崎平和推進協会の写真資料調査部会の協力を得て、聞き取り調査、及び、「復興」に関する史料調査を行うことができた。被爆直後の長崎市の様子や戦後復興を写真史料から調査した。 長崎県立図書館にておいては、長崎の戦後「復興」に関する史料・文献調査を行った。1947年、1948年の『長崎日日新聞』を読み込み、長崎における占領政策を分析する史料を幾つか収集することができた。また、福田須磨子の文献と、個人史料を閲覧した。 以上、戦後長崎の「復興」の調査を進展させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
長崎の戦後「復興」に関する調査では、長崎市民、特に被爆者の実体験から復興を検討するために、長崎県立図書館、長崎原爆資料館において史料調査、及び、地区ごとに被爆者の方々への聴き取り調査を行うことができ、当初の計画以上に研究を発展させることができた。しかし一方で、長崎の調査に重点を置いたために、広島の調査は、研究計画の通りには進めることができなかった。また、国立国会図書館の東京本館に収蔵されているアメリカ国立公文書館・記録管理(NARA)の広島・長崎の占領期の史料調査を行う予定であったが平成24年度は行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究調査の進捗状況を鑑みて、広島の調査により一層力を入れる必要がある。まずは長崎の調査同様に、広島の調査においても研究史の省察をしっかり行う。その上で、史料調査や聞き取り調査を実施していく。 史料調査において、具体的には、広島市公文書館には被爆関係者の個人史料が膨大に寄贈され保管されているので、復興に関する史料を読み込み、広島市という地域の復興プロセスから、復興の問題を検証していく。更に、戦後国際関係や日本史という歴史文脈の中で分類、整理していく必要がある。 広島市立中央図書館には、峠三吉をはじめ、「原爆文学」の作家たちの様々な史料が保管されているので、文芸評論や作品、活動から、被爆者の復興運動が目指したものとは何かも検討していく。これらの作業に携わりながら、被爆体験と被爆者の戦後史を多様な視点から実証分析する予定である。 また、国立国会図書館の東京本館に収蔵されているアメリカ国立公文書館・記録管理(NARA)の広島・長崎の占領期の史料調査を行う。「プランゲ文庫」をはじめとした史料を調査し、両市において辿り着くことの出来なかった史料に関しては、占領軍側の史料からの収集を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に入ってから既に2度、長崎において研究調査を実施しており、6月に入ってからは本格的に広島において聞き取り調査、並びに、史料調査を開始する。また、平成24年度に行うことができなかった占領軍側の史料調査を8月中に国立国会図書館において集中的に行う。 以上、計画的に研究費を使用する予定である。
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