2012 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における植民地博覧会の研究基盤情報の整理と分析
Project/Area Number |
24720303
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
伊藤 真実子 学習院大学, 付置研究所, 研究員 (40626579)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 日本史 / 近現代史 / 博覧会 |
Research Abstract |
本研究の目的は、植民地博覧会の研究基盤となる情報の整理とその傾向分析を行い、日本の植民地の性格、及び特徴を解明することである。24年度の研究実施計画の一つに、欧米の万博、および植民地博覧会の研究基盤情報の整理と傾向分析がある。 24年度の研究実績として、欧米の植民地博覧会についてはパリでの調査および論文執筆、パドヴァでの学会報告、論文執筆がある。 1931年パリ国際植民地博覧会についての調査を行うためパリに出張し、会場となった、ヴァンセンヌの森、現存する当時のパヴィリオン植民地博物館などを調査したほか、ケ・ブランリー美術館に収蔵されている、当時の展示品を視察した。また、日本の仏教美術品を多く収蔵するギメ美術館を訪問し、万博とアジア美術品の蒐集状況を調査した。その成果として、論文「1931年パリ国際植民地博覧会」を執筆した。 また、日本で明治期に開催された内国勧業博覧会は、ヨーロッパで生まれた万国博覧会を参考にしたが、それとは別に、日本にもすでに江戸時代中期には、主に薬物の原料となる動植物、鉱物などを供覧する博覧会のようなもの(薬品会)があったこと、江戸後期には鎖国下のなか、漢籍、洋書の輸入が解禁され、珍しい器具、動植物が輸入されると、日本と近隣アジア地域を俯瞰的に見る視点があらわれ、世界の中に日本を位置づける見方、思想が出始めたことを、木村蒹葭堂を事例として、日本洋学史学会例会、およびパドヴァで開催された国際薬学史学会にて報告した。 この報告内容を含む、ヨーロッパにおけるコレクション文化と、日本の江戸時代のコレクション文化を比較、検討、考察した「蒐集する文化― ヨーロッパと日本における個人コレクションの歴史―」を執筆した。この2つの論文は、伊藤真実子・村松弘一編『見せるアジア・見られるアジア』(山川出版社、2013年刊行予定)に収録される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の一つに、欧米の万博、および植民地博覧会の研究基盤情報の整理と傾向分析がある 24年度は、論文「1931年パリ国際植民地博覧会」を執筆したが、国内にむけて自国の有する植民地を見せる博覧会は、日本、フランス、イギリスなど各国で開催されたが、国際的な植民地博は、1931年にパリで開催されたこの国際植民地博のみである。当時の植民地政策と博覧会の問題を考えるにあたり、この博覧会を第一にとりあげ、その開催経緯を論考した。 論文内では、日英仏の国内外で開催された植民地博覧会の概要をまとめるとともに、主にヨーロッパにおける植民地と博覧会に関する近年の研究動向もまとめた。また、そもそも万国博覧会で植民地を見せることが盛んとなった背景を、帝国主義時代という時代背景のみならず、万国博覧会自体が持つ思想・哲学から論考した。 このように近代の産物である万国博覧会を考察するにあたり、近代以前の博物館、個人のコレクションでどのように、他の地域の品々を蒐集し、展示・分類したのかを考察することは、自明のこととして、無自覚となってしまっている近代の博覧会、博物館の展示、分類方式について再考することができると考え、「蒐集する文化― ヨーロッパと日本における個人コレクションの歴史―」では、江戸時代の稀代の蒐集家木村蒹葭堂を中心に、鎖国したのなか、海外を地理的、文化的にどのように意識し、把握していたのかを論考した。この2つの論文は、伊藤真実子・村松弘一編『見せるアジア・見られるアジア』(山川出版社、2013年刊行予定)に収録される。現在、編者として他の執筆者の論文をとりまとめ、刊行につとめている。 また、日本政府が開催した植民地博覧会について、国会図書館、国立公文書館などで資料を調査し、論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、日本が朝鮮、台湾、満洲などで開催した植民地博覧会について、基盤となる情報(開催年、主催者、展示内容など)を整備し、全体像をまとめる。その上で、1935年に台湾で開催された始政40周年記念台湾博覧会を中心に、台湾における植民地博覧会について調査し、論文にまとめる。 24年度は、フランスで開かれた植民地博覧会について論文を執筆した。その際、イギリスで開催された植民地博覧会についても、概要をまとめたが、イギリス国内、およびイギリス植民地領内で開催された博覧会は、数多い。日本との比較・検証のため、イギリスが開催した植民地博覧会の全体像を把握するため、その基盤となる情報(開催年、開催地、開催対象の植民地、展示内容、主催者など)を整備する。そのために、イギリスに調査に行くとともに、日本の博覧会研究者であるロンドン大学アジア・アフリカ研究所のアンガス・ロッキャー准教授、日英外交史を専門とするロンドン大学スクール・オブ・エコノミクスのアントニー・ベスト准教授と情報交換を行う。 これらの調査、研究をもとに、日本とイギリス、フランスで開催された植民地博覧会について、それぞれの特色と相違点など比較・検討し、植民地博覧会の全体像を把握するためにデータ化する。それをもとに、論文を執筆する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額8312円については、本年度に使用する所要額800,000円と合わせて研究費として使用する。 イギリスで開催された植民地博覧会の調査のため、イギリスへ出張し、外交史料館、大英博物館図書館などで、当時の外交文書、記録、新聞・雑誌などの植民地博覧会に関する記事などの調査を行うほか、現在研究が進められているイギリスの帝国主義とプロパガンダ、イギリスの文化政策とプロパガンダなどの研究を調査し、書籍などを購入する。 日本が開催した植民地博覧会の調査のため、外交史料館、国立公文書館、国会図書館などで調査を行う。とりわけ今年度は、1935年始政40周年記念台湾博覧会を中心に、台湾における植民地博覧会について調査することから、台湾にも出張する。 また、博覧会資料を多数所蔵する、大阪の乃村工藝社でも調査をおこなう。
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