2013 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における植民地博覧会の研究基盤情報の整理と分析
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24720303
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
伊藤 真実子 学習院大学, 国際研究教育機構, 准教授 (40626579)
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Keywords | 博覧会 / 日本近代史 / 植民地 / 万国博覧会 |
Research Abstract |
平成25年度の主要な研究実績は、福井憲彦監修、伊藤真実子・村松弘一編『世界の蒐集ーアジアをめぐる博物館・博覧会・海外旅行』所収の原稿執筆、編集および刊行である。 『世界の蒐集』に所収された原稿は、「はじめにーものから見る世界」、「蒐集する文化ーヨーロッパと日本における博物学と個人コレクション」、「1931年パリ国際植民地博覧会」の3点である。 「はじめにーものから見る世界」では、近代における博物館、博覧会の特徴と、近代化のなかで可能となった海外への直接体験のもたらすものを、総論としてまとめ、本書の狙い、全体像を執筆した。「蒐集する文化ーヨーロッパと日本における博物学と個人コレクション」では、個人コレクションから、近代以前の、自国以外への文化のまなざしがいかようであったかを論考した。「1931年パリ国際植民地博覧会」では、1931年にパリで開催された国際植民地博覧会に、幾度も招待されながらも参加しなかった日本政府および、拓殖局、植民地の統治機関の対応と、当時の日本の植民地をとりまく政治、外交状況について論考した。論文執筆にあたり、平成25年11月に、パリで資料調査をおこなった。 本書は平成24年1月に開催された国際シンポジウム「見せるアジア、見られるアジア」での報告者を中心とした論文集であるが、11人の執筆者の国籍は、日本のみならず、イギリス、ドイツ、中国など多岐にわたる。刊行にあたり、編者として、各執筆者の論考と全体の調和などを考慮しながら、各執筆者とも打ち合わせを重ね、調整した。 また、3月には帝国史研究会において、「植民地と博覧会ー1930年代に日本を事例として」という報告をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、近代の博覧会が抱える帝国主義と植民地の問題に取り組んだ。その成果が、福井憲彦監修、伊藤真実子・村松弘一編『世界の蒐集』である。所収されている論文「はじめにーものから見る世界」で、総論として、博覧会と博物館という空間における帝国主義と植民地の表象の問題、また近年、世界的な問題となりつつある過去の記憶の保存機関としての博物館という施設が直面する課題について、総合的に論評した。また、同じく『世界の蒐集』に所収されている論文「1931年パリ国際植民地博覧会」において、植民地を対外的にどのように見せるか、また、見せる必要性を感じていたのか、否か、必要性を感じるのは、どのような政治状況の場合か、ということを、植民地博覧会への参加、不参加をめぐる問題から論考した。以上のように、平成25年度は、博覧会と植民地をとりまく状況について、総合的な見地と、具体的な状況からそれぞれ分析し、論評し、書籍という形で刊行した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、1930、40年代に開かれた博覧会を中心に研究をすすめる。植民地で開催された博覧会として、1933年満洲大博覧会、1935年始政40周年記念台湾博覧会、1940年始政30周年記念朝鮮大博覧会を中心に研究をすすめる。3つの博覧会の開催経緯、主催団体、博覧会の内容、そして、現地での受け止められ方などをそれぞれ詳細に調査する。そのうえで、3つの博覧会の同質性、異質性を考察し、それぞれの統治機関と現地との関係性、本国との関係性などを踏まえて論考する。また、1937年にパリで開催された万国博覧会において、日本、ドイツ、イタリアの展示内容について、当時の政治状況、国際状況とも合わせて論考する。 また、この時代、国内で開催された博覧会についても調査する。とりわけ1938年に開催された国民精神総動員国防大博覧会、支那事変聖戦博覧会について調査する。この時代、戦争を展示する博覧会、博物館施設が人気であった。そのなかで、戦地となっている地がどのように展示され、人々のなかに教示されていったのかを論考する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたが、翌年度分として請求した助成金とあわせ、本年度使用する。パリへの資料調査、書籍の購入などに助成金の大半を費やしたが、若干残額が生じてしまった。 次年度使用額を、翌年度分として請求した助成金とあわせ、本年度使用する。その際、韓国、台湾などへの出張、フランスもしくは、イギリスへの出張調査、国内においては、乃村工藝社など博覧会資料を有する機関への出張調査費として使用する。また、近年出版されている博覧会関係の復刻資料、研究書を購入する。
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