2015 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における植民地博覧会の研究基盤情報の整理と分析
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24720303
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
伊藤 真実子 学習院大学, 付置研究所, 准教授 (40626579)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 万国博覧会 / 植民地博覧会 / 内国勧業博覧会 / 博物館 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の主要な研究業績は、平成27年5月18日に学習院大学で開催された国際シンポジウム「近代日本と観光旅行ー絵葉書と博覧会ー」の主催と、そのシンポジウムでの報告「博覧会と観光-1930年代の博覧会を事例として」である。 本シンポジウムでは、ファシズムと観光に関する研究者で、『紀元二千六百年ー消費と観光のナショナリズム』(朝日新聞出版、2010年)の著者である、ポートランド州立大学准教授ケネス・ルオフ氏による「The Empire of Mobility: What Postcards Tell Us about the Empire of Japan](移動する帝国:絵葉書が語る大日本帝国)報告と、近代東アジアにおける絵葉書研究者のラファイエット大学准教授ポール・バークレー氏による「絵葉書を史料とする研究の方法について」の報告、そして申請者の3人による報告と、ディスカッションが行われた。近代日本における観光旅行が、帝国の一員であるという経験の形成の一翼をになっていたこと、また直接の旅行体験をしなくとも、絵葉書や博覧会という擬似旅行体験を通じて、帝国の領域を疑似体感し、博覧会の展示、娯楽を通じて帝国領土に関する知識などを得ることが出来たことに注目し、申請者のこれまでの研究者ネットワークを通じて、観光旅行、絵葉書を専門とするルオフ氏、バークレー氏を招きシンポジウムを開催した。 申請者による報告「博覧会と観光-1930年代の博覧会を事例として」では、1930年代の日本国内での博覧会が、当時の植民地も含めた観光旅行の推進という観点から開催されながらも、やがては新たな獲得した植民地の様子だけでなく、1938年に開催された「国民精神総動員国防大博覧会」(上野)、支那事変聖戦博覧会(西宮)など進行中の戦況など戦争そのものを見せていく博覧会が増加していった様相を論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、植民地の見せ方だけでなく、進行中の戦況を見せる装置としての博覧会、そして博覧会への動員により戦争への理解、支持を広めていく様相について重点を置いた。まず、5月に学習院大学で開催された国際シンポジウム「近代日本と観光旅行ー絵葉書と博覧会ー」を主催し、そのシンポジウムで「博覧会と観光-1930年代の博覧会を事例として」の報告を行った。シンポジウムの他の報告者であったルオフ氏、バークレー氏とのディスカッション、および質疑応答により、問題点が深まった。その成果を生かして更なる資料調査と考察を深め、現在、論文「1930年代の博覧会、博物館にみる戦争」を執筆している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在執筆中の論文「1930年代の博覧会、博物館にみる戦争」を完成させて投稿する。また、英語の修正を続けている論文Collection History in Japan from the Seventeenth to Ninteenth Centuriesの修正を終え、完成させ平成28年度中にはJournal of collectionsに投稿する。
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Causes of Carryover |
11月にウィーンに渡航し、資料調査を行う予定であった。しかしながら10月末に12月に入院、手術することが決定し、渡航を取りやめた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
科研費(基金)の次年度への期間延長の申請をすでに行っており、その助成金を本年度は使用する。その際、平成27年度に行えなかったウィーンでの資料調査のため海外へ出張する。国内においては、乃村工藝社など博覧会資料を有する機関への出張調査費として使用する。本年度は最終年度であることから、英語論文の投稿をおこなうために、英語のネイティブチェックにも使用する。
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