2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720310
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
人見 佐知子 甲南大学, 人間科学研究所, 博士研究員 (00457029)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遊廓 / 遊女 / 売買春 / 都市史 / 公娼制度 / 娼妓解放令 / 近代転換期 / 茶屋町 |
Research Abstract |
本研究は、公娼制度の「近代化」の歴史過程とその特質を明らかにするために、①近代転換期の遊廓を含む地域社会と国家の関係に注目し、②「遊廓社会」論の視点を重視して分析をすすめている。 ①を重点においた研究をすすめるために、東京都公文書館所蔵の「芸娼妓解放令」関連史料の収集を実施した。史料は、翻刻をすすめるとともに分析を行い、成果の一部を2012年度第42回明治維新史学会大会(2013年6月10日)で報告した(報告タイトル「「芸娼妓解放令」の公布と近代公娼制度への道」)。本報告をベースに、「セクシュアリティの変容と明治維新」(『講座明治維新 明治維新と女性』2013年刊行予定)を執筆した。 ②の観点からのする研究成果として、「19世紀金沢の茶屋町と出合宿」(『シリーズ遊廓社会1 三都と地方都市』2013年6月刊行予定)を執筆した。 また、長崎歴史博物館での現地調査を実施した。その結果、丸山・寄合町関係の基本史料の閲覧・撮影を実施し、明治初年までを含む同遊廓の史料所在情報も一通り収集することができた。 さらに、近代神戸(開港場)を対象とした遊廓・公娼制度研究では、仁川大学(韓国)で実施された国際シンポジウムで報告した。おなじ開港場をもつアジアの遊廓との比較研究をすすめていくうえで意義があったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画のうち、もっとも重点をおいていた、東京都公文書館所蔵の「芸娼妓解放令」関連史料の収集を達成した。同時に、翻刻作業をすすめ、その成果を学会で報告するとともに、論文を執筆した。(刊行は平成25年度)。 それ以外に、長崎での史料調査を実施し、遊廓社会研究をすすめるための新たなフィールドを開拓することが出来た。また、仁川大学での国際シンポジウムに参加し報告したことで、遊廓・公娼制度の比較研究をすすめるための足掛かりをつくった。これらは、当初の研究計画には入っていなかったが、新たに実施し、成果が得られた研究である。 一方で、研究計画に掲げていた、沖縄県の「芸娼妓解放令」関連史料の収集は実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度収集した東京都公文書館の「芸娼妓解放令」関連史料の翻刻を引き続き行う。また、「芸娼妓解放令」後の近代公娼制度形成過程の歴史研究をすすめるために、さらに東京都公文書館の史料の調査・収集を実施する。また、国際日本文化研究センター所蔵の民事判決原本データベースから関連史料を収集し、翻刻するとともに、分析を行う。 「芸娼妓解放令」は、府県ごとにその実施過程・経過がことなるために、各府県の「芸娼妓解放令」関連史料の調査を行う。その足掛かりとして、国立公文書館所蔵の府県史料(内閣文庫)の調査を実施する。また、北海道での史料調査も予定している。以上によって、「芸娼妓解放令」の府県ごとの比較検討を行う。これは、前年度執筆した東京府を対象とした「芸娼妓解放令」の歴史的特質の分析との比較も念頭においている。 研究成果は、適宜学会で報告するとともに、論文を執筆することとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
仁川大学でのシンポジウムでは、旅費は仁川大学の負担であったこと、沖縄県の「芸娼妓解放令」関連史料の収集ができなかったことが、研究費に余裕が生じた主要因である。 今年度は、以上をあわせて、東京都公文書館、国立公文書館などへの史料調査のために旅費を使用する。また、史料の収集のための複写費を使用予定である。収集史料の整理のため、記録メディア、ファイルなども購入予定である。また、収集した史料の翻刻のため、謝金を使用する予定である。 情報収集のために、歴史系の学会(歴史学研究会、日本史研究会、大阪歴史学会など)にも参加する。そのために旅費を使用する。 「芸娼妓解放令」関連の史料や図書を購入するために研究費を使用する。
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Research Products
(3 results)